おんじょどいの小屋

鹿児島弁辞典「む」}

「む」

むい:無理 「高(た)け希望(のぞ)み DNA(ディーエヌエー)が 無理(むい)ち言(ゆ)っ [柳村遊月]」 「腰(こし)パンに 品格(ひんかっ)なんだ 言(ゆ)たち無理(むい) [石塚律子]」

むいなか・むいね:可哀相 「可哀相(むい)ねこっ 逝(い)た婆(ば)を始終(はいと) 爺(じ)あ探(さ)げっ [下栗志乃]」 「難産に 命(いの)つ選べち 可哀相(むい)ね沙汰(さた) [蔵ノ下夢石]」

むいめ:娘 「嫁(い)ことせん 娘(むいめ)い悩(なや)ん 老夫婦(おんじょみと) [松元清流]」 「日帰(ひげ)い言(ちゅ)が かった無心に 来た娘(むいめ) [栫 路人]」

むかえ:向こう側・対岸

むかしなじゅん・まかしなじん:幼馴染・幼友達 「入猫(いいねこ)い 昔馴染(むかしなじん)の 名を付(つ)けっ [入来義徳]」

むかすね・むかずね:向う脛 「向脛(むかずね)が 二本じゃ足(た)らん 子分限者(こぶげんしゃ) [有馬湧声]」 「向脛(むかずね)が 足湯い並(な)るっ 品評会(ひんぴょかい) [原田菊男]」

むかぜ:百足 「山ん宿 五寸(ごっすん)百足(むか)ぜ 飛(と)っ起(お)きっ [岩崎美知代]」

むかば:前歯・門歯 「前歯(むかば)をば 抜(ぬ)だや変(おか)しか 顔(つら)いなっ [尾崎若狭]」

むかるっ・むかわるい・むかわるっ:嫁ぐ・嫁入りする 「嫁(むか)れたや 半年経(た)たじ 亭主(て)すば敷(し)っ [末村多櫛]」「着物(きもん)どま 一枚(いっめ)も持(も)たじ 嫁(むから)れっ [那加野黎子]」

むかん:向かない むかじ:向かないで 「神様(かんさあ)が こっちを向 (む)かじ 不合格(ひっちゃ)えっ [樋口一風]」

むきない・むきなっ:熱中する・真剣になる

むくい・むくっ:向ける 「やぜろしか 亭主(て)し尻(し)ゆ向(む)けっ 狆(ちん)と寝(ね)っ [長瀬ポンパツ]」 「カメラをば 向(む)くれば笑顔(えご)ん 百歳(ひゃっ)の祝(ゆえ) [吉岡道場]」

むくかゆい・むくかゆっ:向きを変える 「女房(かか)ん胸 上げ底じゃれば 向(む)く変(か)えっ [馬場日登巳]」 「焼酎(しょちゅ)ん匂(か)ぜ ひといで足が 向(む)く変(か)えっ [有川南北]」

むくっ:無口 「亭主(て)しゃ無口(むくっ) 女房(かか)は喋(しゃべ)いが 仲は良(ゆ)し [田畑椪柑]」

むくろいき:必死に・懸命に 「むくろいき 働(はた)れっ来たて 首(く)びけなっ[小倉牛哲]」 「むくろいき 抱(で)たやブラジャが 向(む)く変(か)えっ [入来院彦六]」

むけ:向こう 「消灯ん 病室(びょうしっ)の向(む)け 赤提灯(あかちょちん) [植村聴診器]」

むげ:惨い 「万物(ばんぶっ)の 霊長(れいちょ)同士で 惨(む)げ戦争(いっさ) [前田あやめ]」

むけづら:向う面・顔面 「五万石(ごまんご)く 吉良が向面(むけづ)れ 投げつけっ[松元景品券]」

むけめ:迎え・出迎え 「不合格(お)てたなあ 塾(じゅっ)の広告紙(ちらし)が 迎(むけ)め来(き)っ」 「年金日 孫と嫁女(よめじょ)が 迎(むけ)め来(き)っ[東 五本松]」

むこ:向かう 「万歳で 米寿い向(む)こっ 喜寿ん祝(ゆえ) [野間口鈴女]」「山(や)め向(む)こっ 好(す)っち 大声(うごえ)ん プロポーズ [諸木小春]」

むこ:向こう 「向(む)こも義理(ぎい) こっちも義理の 久(な)げ交際(つっけ) [東瀬戸緋呂子]」 「抜(ぬ)け上(あ)がっ 向(む)こ鉢巻(はちまっ)も ずい落(お)てっ [入来創雲]」

むこ:反抗する・手向かう 「切れた女房(かか) 地響(じひび)く立てっ 抗(む)こっきっ [泊 白水]」「五十(ごんじゅ)女房(かか) そいがないなち 反抗(むこ)っきっ [上籠若菜]」

むこいい:婿入り

むごか:惨い 「熱気球(ねっききゅ)ん 空中(くうちゅ)爆発(ばくはっ) 惨(むご)か事故 [尾崎若狭]」

むしい・むしっ:毟る 「退職金(やめぎん)ぬ 半分(なから)はやれち 毟(むし)い女房(かか) [澤津乙名]」 「血筋(すっ)じゃ無(ね)て 世ん荒波(あらなん)が 毛を毟(むし)っ[池上歌子]」

むしくれ・むしくれば:虫歯 「虫食(むしく)れ歯 燠(おき)を銜(くわ)えた よな痛さ [山元自在鉤]」 「医者殿(いしゃどん)な 抜(ぬ)こ言(ちゅ)が惜(たし)ね 虫歯(むしくれば) [堂園三洋]」

むしこ:息子 「オレち言(ゆ)で 詐欺か思(と)もえば 馬鹿息子(むしこ) [おんじょどい]」「珍(めずら)しか 音信(そ)の無(ね)息子(むしこ)が 贈(おく)い物(もん) [満吉満秀]」

むしと:筵・蓆(むしろ) 「朝帰(あさもど)ゆ 針(はい)の筵(むしと)を 準備(しこ)っ待(ま)っ [深道好之]」 「喫煙者(たばこの)ま 庭ん筵座(むしとざ) 新築祝(けんぜゆえ) [神薗善多]」

むしめ:娘 「早(は)よ隠(かく)せ 素手(てぶら)娘(むしめ)が 実家帰(さともど)い [鞆田紅花]」「習(な)るたごっ 娘(むしめ)も亭主(て)すば びりっやっ [上籠若菜]」

むしらるい・むしらるっ:毟られる

むすっ:結ぶ 「真結(まむす)っの パンツい慌(せし)こ 下(くだ)し腹 [瀬戸口湯気]」「結(むす)っ目が 緩(ゆ)りかったたろ 離婚(わかれ)騒動(そど) [茶里]」

むすばるい・むすばるっ:結ばれる

むぜ)可愛い 「指切(ゆびき)いで 長生(ながい)くしてち 可愛(む)ぜ約束(やっじょ) [永徳天真]」「可愛(む)ぜ子いな 旅をち出(で)たや 戻(もど)っ来(こ)じ [津留見一徹]」

むぞ:可愛く 「大(ふ)て地震(なえ)い 親父(おや)じ雷(かんなれ) 可愛(む)ぞ見(み)えっ [石塚律子]」 「厳(いみ)し婆(ば)も 総入歯(がんぶ)ゆ除(と)れば 可愛(む)ぞ見(み)えっ [山路野菊]」

むぞか:可愛い 「本命(ほんめい)は パパにあげるち 可愛(むぞ)かチョコ [上籠若菜]」「初孫(はっまご)ん 可愛(む)ぞか一発(いっぱ)つ 爺(じ)が嗅(かず)ん [入来院彦六]」

むぞがい・むぞがっ:可愛がる 「亭主(とと)よっか 犬(いん)ぬ可愛(むぞ)がい 倦怠期 [種子田 寛]」 「可愛(むぞ)がった 娘(むひめ)も直(いっ)き 女房(かか)ん加勢(かせ) [伊地知 孝]」

むぞなか・むぞね:可愛くない

むた・むただ:湿田・湿地・沼地 「草取(くさと)いも 湿田(むた)で倍大儀(て)せ 肥満(だんべ)女房(かか) [米元年輪]」「遺産分け 湿田(むただ)一枚(いっめ)も 貰(も)ろださじ [仮屋一発]」

むだぐっ:無駄口

むだづけ:無駄遣い

むっ:向き 「肥満(だんべ)女房(かか) 綱引(つなひ)っ向(む)っち 名が挙(あ)がっ [下栗志乃]」 「貸せ言(ちゅ)たや 曽我どん向(む)っの 傘を出(で)っ [山下須奈穂]」

むっ:向く 「勝ち力士 花道(はなみ)つ顎が 天ぬ向(む)っ [瀬戸口湯気]」「俺(お)ゆば向(む)っ あんシャラポアが 投げキッス [堂園三洋 ]」

むっ:剥く 「領土じゃち 目を剥(む)っ大声(うごえ) 内弁慶(うっぼこい) [蕨迫四郎]」

むっ:鞭 「愛の鞭(むっ) 力加減が 難(むっか)しゅし [栫 路人]」「鼻ん差い 騎手は躍起(やんき)い 鞭(む)つ入(い)れっ」

むっ:麦 「霜柱(しもばし)て 麦(むっ)の新芽も 浮(う)っ上(きゃ)がっ [倉元天鶴]」「貧乏者(ひんじゃもん) じゃね衆(し)も食(く)ちょい 麦(むっ)の飯(めし) [三條風雲児]」

むっかし:難しい 「寄付集(つな)ぐ 難(むっか)し顔(つら)で 吝嗇(けち)が待っ [上山天洲]」 「境(さけ)諍(いさ)け 難(むっか)し顔(つら)で 啀(いが)ん合(よ)っ [有馬湧声]」

むっがら:麦わら・麦藁 「蝉(せ)む狙(ね)ろっ 麦藁(むっがら)帽子(ぼし)が 息(い)く殺(こ)れっ [永谷 勝]」 「農業(さっ)十年(じゅねん) 麦藁(むっがら)帽子(ぼし)も 似合(にお)っきっ [上里惣門]」

むっきゃあせ:向き合わせ

むっきょ:向き合う 「超ミニと 向(む)っ合(きょ)た椅子ん 目が迷(まよ)っ [前野一合敏]」 「都合(つご)ん悪(わ)り 奴(わろ)と向(む)っ合(きょ)た 祝(ゆえ)ん席(せっ) [堂園三洋]」

むっふん:麦踏み 「麦踏(むっふ)んに 頬被(ざんねんかぶ)い 蟹(がね)歩(あゆ)ん [金井一馬]」 「麦踏(むっふ)んに 誂(あつら)えたような 偏平足(べったあし) [永山天人]」

むで:無精 「多忙時(せしけど)き 無精(むで)亭主(て)しゃ猫と 炬燵(こた)つ抱(で)っ [上村牛歩]」 「無精(むで)婆(ば)をば 菜園(さえん)の雑草(くさ)が 引張(そび)っ出(で)っ [樋渡草団子]」

むでごろ:怠け者・意気地なし・気力のない者 「怠惰者(むでごろ)が すごちゃい職(しょっ)が 無(ね)ち吐(か)えっ [安田踊い子]」

むでな:不埒な・無体な 「餅(もっ)好(ず)っの 楽(だっ)な亭主(とと)じゃち 無精(むで)な婆(ばば) [樋渡草団子]」 「きし無体(むで)な 丸に十(じゅ)の字の お菓子(か)しょ食(く)っ [大久保胡坐]」

むなぜっ:胸騒ぎ

むねさっ:胸元

むひこ・むひこんこ:息子

むひめ:娘 「呉れち言(ゆ)で 娘(むひめ)思(と)もたや 飼(こ)ちょい猫 [大西学老]」「可愛(むぞ)がった 娘(むひめ)も直(いっ)き 女房(かか)ん加勢(かせ) [伊地知 孝]」

むるい:群れる

むんずむんず:むずむず 「はんや節(ぶ)し むんずむんずん 踊(おど)い好(ず)っ [桑元行水]」