おんじょどいの小屋

鹿児島弁辞典

あかとんぼ

2006年8月、「詩集 あかとんぼ」の作者大橋晴夫さんより「あかとんぼの一部を鹿児島弁に翻訳してほしい」との依頼を受け、 音声とともに作ってみました。
大橋さんは既に東北地方の方言に訳した18編をまとめて出版されています。
これから九州・沖縄地方のものを集めたいとのことです。
沖縄のうちなあぐちに訳されたホームページもありますので、 是非見聞してみてください。
また音声はありませんが、秋田弁のページも あります。

あかぼい(鹿児島弁翻訳)   

赤蜻蛉(あかぼい)ょ煎(せじ)っ飲(の)めぁ
風邪(かぜっ)が引(ひ)っちかん

しっちゃい落(お)てた
コンクリん壁んあい焼け跡で
誰(だい)ぃ言(い)っ聞(か)せられたたろかい
捕(と)いたくったとを覚(おぼ)えちょい

硝子(ガライ)やぁブリキん欠片(かげ)を掘いたくちゃ
飴(アメ)ん代(こぃ)よ稼(かせ)いじょった俺等(おいどん)
あん日(ひ) 空地(あっち)ちゅう空地(あっち)にゃ
赤蜻蛉(あかぼい)ばっかいが沢山(ずんばい)おった

艶(つや)んあい尻尾(しいぼ)
きらんきらんした羽(はね)
ひん毟(むし)った肉(にく)ゎ
うどぼいょ喜(よろこ)ばせっ

親父(おやっ)どんぬ焼(や)き 母(かか)どんぬ焼いた炎が
還(もど)っきた夕焼け

袋い詰めたたろかい
そいとも籠い入れたろかい
捕(と)いたくった赤蜻蛉(あかぼい)ん始末(しまち)ょ
覚(おぼ)えちゃおらん

あかとんぼ(原詩) 大橋晴夫

あかとんぼを煎じて飲むと
かぜをひかない

くずれおちた
コンクリートの壁のあるやけあとで
だれに教えられたのか
捕みあさったのを覚えている

ガラスやブリキの破片を掘り返しては
あめ代をかせいでいた僕ら
あの日あき地というあき地には
あかとんぼだけが豊富だった

つやのあるしっぽ
きらめくはね
むしりとったにくは
おにやんまをよろこばせ

父をやき母をやいた炎が
還ってきたゆうやけ

ふくろにつめたろうか
それともかごにいれたろうか
捕みあさったあかとんぼの始末を
覚えてはいない