鹿児島弁辞典「く」}
「く」
く:食べる 「食(く)も飲(の)んも 女房(かか)が下知(げ)つしっ 健(さか)し五体(ごて) [稲留明天]」「匙で飯(め)す
食(か)すいも涙(なんだ) 食(く)も涙(なんだ) [永田酒楽]」
くい:やり繰り 「世帯(しょて)ん繰(く)や 知(し)たじ馬鹿亭主(て)しゃ 飲(の)ん歩
(さ)れっ [猪俣凡児]」「丸太橋(まるたば)す 渡(わた)っおいよな 社長(しゃちょ)ん繰(く)い [津留見酎児]」
くい:来る 「元気ねち 蝶々(ちゅちゅ)かあ年中(ねんじゅ) 来(く)いメール [満吉満秀]」「あいがたか こげな隅
(すん)ずい 来(く)い手紙(てがん) [西ノ園ひらり]」
くい:栗 「丸(まっ)で無駄(すだ) 栗(くい)どま他人(ひと)が 拾(ふ)るた後(あと) [入来義徳]」「栗飯(くいめし)
の 代(か)えが欲(ほ)し態(ふ)の 大食漢(うぐれわろ) [入来創雲]」
くいがえ・くいがよか・くいのよか:暮らし向きがよい・ふところ具合がよい 「傍(はた)ん目も 繰(く)いが良(ゆ)
なれば 違(ち)ごっきっ [上籠若菜]」
くいがわり・くいのわり:暮らし向きがよくない・景気が悪い 「繰(く)いの悪(わ)り 店じゃろ直(いっ)き 集金(と)
いけ来(き)っ [有川南北]」
くいま:車 「運転(うんてん)な 妻(かか)い宛(あて)ごた 火(ひ)の車(くいま)
[中村雲海]」「飲兵衛(のんべ)客(きゃ)き 車(くいま)じゃろがち 茶を出せっ[飯福小手毬]」
くいめし:栗飯 「栗飯(くいめし)の 代(か)えが欲(ほ)し態(ふ)の 大食漢(うぐれわろ) [入来創雲]」
くいやい・くいやんせ:ください 「ばぁちゃん ぜんぬ くいやい」(婆ちゃん、お金をちょうだい)
くいやっ:くださる
くいよっかはよ:来て早々に
くかけ:食いかけ・食べ残し 「難民ぬ 食残(くか)けい集(たか)い 蠅(へ)で思(お)もっ [津留見酎児]」
くかせ:手伝いにきても食べることだけ励むこと 「早苗饗(さのぼい)の 食(く)加勢(かせ)飲(の)ん加勢(かせ)
わぜ忙(せし)け [三條風雲児]」「家族(けね)ごっそ 食(く)加勢(か)せ帰(もど)った 甘藷(かいも)獲(と)い [三條風雲児]」
くかた:食べること 「収穫期(でけあ)きな 食(く)かたん加勢(かせ)が 凄(わ)ぜ増(ふえ)っ [西 萌]」「お育
(そだ)っが 良(よ)かで食(く)かたも 暇が要(い)っ [村田子羊]」
くぐい・くぐっ:潜る 「飲(の)ん友人(どし)と 暖簾ぬ潜(くぐ)っ 良(よ)か気分 [上瀬明星]」
くくむ・くくん:銜える 「馬(うん)めなれ 帯(お)ぶば銜(くく)めち 孫ん騎手 [仮屋万丸]」「眠(ね)び駄々(やか)
れ 婆(ば)あ垂れ乳房(ちち)を 銜(くく)ませっ [福冨野人]」
くくん:含む 「歯が痛(い)とし 焼酎(しょちゅ)をば含(くく)ん 夜(よ)を明(あ)けっ [入来創雲]」
くけ:後悔 「こげな亭主(て)し 何(な)ゆ血迷(ちま)よたか 年中(ねんじゅ)後悔
(くけ) [楠八重渓流]」「買(こ)うて後悔(くけ) 買(こ)わんで後悔(くけ)ん 抽選日
[大脇保子]」
くけい・くけっ:間引きする 「日陰(かげびら)で 中憩(なかよ)くしちょい 粟(あわ)間引(くけい) [入来義徳]」
くさ:~こそ 「神妙な 顔(つら)じゃればくさ 叱(が)られ役(やっ) [大重爆笑]」「今年くさ 今年くさ言(ちゅ)て
また正月(しょがっ) [樋渡草団子]」
くさい:鎖 「妻(かか)ん留守(ず)しゃ 鎖(くさ)ゆ解(ほ)でた 犬(いん)になっ [瀬戸口湯気]」「赤(あ)け糸が
長(な)ご経(た)っうちな 鎖(くさ)いなっ [満留ぐみ]」
くさか:臭い
くさっ・くさっな:臭木(くさぎ)若葉を食用にする 「臭木(くさっな)ん 汁(しゅい)で朝飲(ちゃのこ)ん 老夫婦
(おんじょみと) [三條風雲児]」「久振(さしかぶ)い 臭木菜(くさっな)を料理(じゅ)っ 母親(か)け供(あ)げっ [満留ぐみ]」
くさとい:草取り 「老骨(おんじょぼね) 草取(くさと)いギーギ 音がしっ [崎山典子]」「狭(せ)め庭も 草取
(くさと)ゆすれば だだ広(びろ)し [山下明良]」
くさらかす:腐す・悪口をいう 「成(な)い上(あ)がゆ 陰じゃ渾名(しこな)で 腐(くさ)らけっ [楠八重渓流]」
「選挙いな 行(い)かじ政治を 腐(くさ)らけっ [金井一馬]」
くさるい:腐れる
くし:籤 「外(はず)れ籤(くし) 当(あ)たらんごっち 車(くい)
め貼(は)っ [伊地知 孝]」「鼻紙(はなが)みも ならん宝籤(くし)どん 年中(ねんじゅ)買(こ)っ [上薗佳笑]」
くじっ:ほじくる・穿つ・くじる 「貝杓子(けしゃくひ)で 穿(くじ)っやろそな 勝手耳(かってみん) [有川八味]」
「膝枕 綿棒(めんぼ)で優(やさ)し 耳(みん)抉(くじ)い [西迫順風]」
くじっ:挫く
くじびっ:くじ引き
くしゃく・くしゃっ:柄杓 「口答(くっごた)え 母親(かか)は柄杓(くしゃっ)で 尻(け)つ叩(た)てっ [大重陣笠]」
「夜の夜中(よな)け 柄杓(くしゃ)き食付(くち)ちょい 酔(よく)れ亭主(とと) [上田 格]」
くしゃん:くしゃみ 「クシャンずい 凄(わ)ぜ上品な 隣(つっ)の奥様(こじゅ) [堂園三洋]」「爺(じ)も元気
はたれっ大(ふ)とか 嚏(くしゃ)むしっ [有川南北]」
くじょ:苦情 「苦情(くじょ)吟味 役所(やっしょ)ん中を 盥回(たれまわ)し [永徳天真]」「受付ん 笑凹(えくぼ)
が苦情(くじょ)を 黙(だま)らせっ [小瀬一峻]」
くすい:薬 「父親(とと)が咳(せっ) 母親は真っ先き 子供(こ)い薬(くすい)
[田代勝泉]」「女房(かか)ん病(びょ)は 薬(くすい)よっかも 銭(ぜん)が効(き)っ [日高山伏]」
くずれ:駄目な・ろくでもない 「くずれ亭主(て)し 買(こ)てずいすごちゃ 無(な)か難儀 [福冨野人]」「パンツ
ずい ぞっぷいなけた くずれ予報(よほ) [塚田黒柱]」
くずれいん:駄犬 「慣(な)らせかて 三度噛(か)ん付(ち)た くずれ犬(いん)
[永井牛山]」
くせ:臭い 「検問な 大蒜(ひい)臭(く)せ息(いっ)も やれ嗅(かず)ん [工藤天然]」「臭(く)せ臭(く)せち 言(ゆ)
ながいもまた 嗅(かず)んみっ [市来流星]」
ぐぜ:愚痴・小言 「割り勘で 愚痴(ぐぜ)も小言(こごっ)も 聞(き)かされっ
[弓場正巳]」「婆(ば)ん小言(ぐぜ)い 遠(と)おもなろだい 俺(おい)が耳(みん) [伊地知 孝]」
ぐぜい:愚痴る 「人よっか 一歩前なきゃ 愚痴(ぐぜ)い奴(わろ) [中村雲海]」「長(な)ご生(い)ぎっ 友(どし)が居
(お)らんち 愚痴(ぐぜ)い婆(ばば) [佐伯山神]」
くせか:~こそ
くぜごっ:小言・愚痴・文句 「愚痴(ぐぜごっ)も 良(よ)か医者どんな 黙(だま)っ聞(き)っ [福冨野人]」
ぐぜっ:愚痴る・小言をいう 「桜島(さくらじ)め 自慢ぬしたい 愚痴(ぐぜ)ったい [樋口一風]」「少(すっ)
ね給料(はれ) 尚(なお)削(けず)られっ 愚痴(ぐぜ)っ女房(かか) [萬福平次]」
くせらし:生意気 「生意気(くせら)しか 相合傘(あいあいがさ)ち 一年坊
(いっねんぼ) [蕨迫四郎]」「横(よん)ごが家(え) 犬(いん)も生意気(くせら)し 顔(つら)を
しっ [塚田黒柱]」
くそうい・くそごい:烏瓜 「烏瓜(くそごい)が 木の梢(そ)れ真赤(まっ)け 荒れた山 [三條風雲児]」
くそこの:食い損なう 「据え膳ぬ 空気が読(よ)めじ 食(く)損(そこ)ねっ [おんじょどい]」
くそべ:何にでも手を出したがる人 「糞蠅(くそべ)じゃち 尻(しい)の座(すわ)らん 子をば叱(が)っ [江平光坊]」
「糞蠅(くそべ)じゃが 趣味ばっかいで 首尾(び)は取(と)れじ [前村幸治]」
くだい:下り 「わぜ頑張(きば)っ 今は余裕(ゆつら)す 下(くだ)い坂 [吉丸セツ子]」「俺(おい)が軽自動車
(けい) 下(くだ)いの走(はし)や ベンツ並(なん) [多田一行]」
くだい・くだっ:下る 「こら退(ど)けち 山道(やまみ)つ下(くだ)い 鬼蜻蛉(かっなぼい) [永徳天真]」「離島
(しま)い医者 犬(いん)ずい迎(む)けめ 浜(は)め下(くだ)っ [菖蒲谷天道]」
くださん:食べる暇がない 「巫女なんだ 飯(めし)も食(く)ださん 三が日(にっ) [上別府印句]」
くだしばら:下痢腹 「下(くだ)し腹(ば)れ ちわいちわいの 特急(とっきゅ)バス [小森寿星]」「真結(まむす)
っの パンツい慌(せし)こ 下(くだ)し腹 [瀬戸口湯気]」
くだっ:砕く 「梅(うんめ)好(ず)っ 爺(じ)どま種子(さね)迄(ずい) 噛(か)ん砕(くで)っ [堂園楽志]」
くだまき・くだまっ:轡虫(くつわむし) 「轡虫(くだまっ)が 休(よ)くえば蟋蟀(ぎみ)ん 声がしっ [三條風雲児]」
くち:満腹で苦しい 「腹が窮屈(く)ち 言(ちゅ)ながら箸(は)すば まだ握(にぎ)っ [栫 路人]」
くちっ:食い付く 「疲(だ)れ身体(ごて)い 一番(いっ)の薬(くすい)ち 盃(ちょ)き食付(くち)っ [有馬湧声]」
「義理チョコい 純情(うぶ)なハートが 直(じ)き食付(くち)っ [上薗佳笑]」
くちゃねくちゃね:食っては寝、食っては寝・その日暮らし 「気兼ねせじ 食(く)ちゃ寝(ね)が嬉(うれ)し 実家
(さと)帰(もど)い [森山厚香]」
くちらかす:食い散らす 「食散(くち)らけっ 台風(かぜ)が吹(ひ)たごっ 帰省(さ)て帰(もど)っ [有川南北]」
「雀奴(すずめわろ) 多連(うづ)れで稲を 食散(くち)らけっ [満留ぐみ]」
くちん:食事代・食費
くっ:来る 「音もせじ そろいと来(く)っど エコ車(ぐいま) [西 幸子]」「別(べ)ち暮(く)れっ 希(まね)けん
来(く)っで 良(よ)か嫁御(よめじょ) [金井一馬]」
くっ:口 「釘(くっ)よっか 口(くっ)で繕(こそく)っ 呆(ぼ)え大工
[樋口一風]」「口(くっ)のしこ かなわん足の 歯痒(はが)いこっ [大和 渚]」
くっ:首 「爺婆(じばば)どま 首(くっ)も据(す)わらん 児(こ)を奪合(ばこ)っ [満留ぐみ]」「首相(しゅそ)ん
首(くっ) 何度(はいと)交換(か)えてん 首尾(び)あとれじ [西 幸子]」
くっ:屑 「屑(くっ)ち言(ゆ)な 俺(おい)にも五分ん 魂(たま)しゃあっ [有川八味]」
くっ:釘 「嫁ん料理(じゅい) 議(ぎ)どん言(ゆ)めどち 両親(おや)い釘(くっ) [中囿和風]」「短気者(たんきもん)
曲がった釘(くっ)も 叩(たた)っ込(く)っ [長山紫の君]」
くっいさけ・くっげんか:口喧嘩 「口諍(くっいさ)け 学歴(がくれっ)なんだ 役(や)き立(た)たじ [弓場正巳]」
「口喧嘩(くっげんか) 呆(ぼ)え仲裁が 拗(こじ)らけっ [永徳天真]」
くっがかの:口達者である
くっかね:口達者・口上手 「口達者(くっかね)ん 女房(かか)をリストラ すごっあっ [上籠若菜]」
くっぐいま:口車
ぐっぐっ:ごくごく(水を飲むさま)
くっさっ:口先 「口先(くっさっ)で 釣られたあとで 歯軋(はが)むしっ [鶴田昌憙]」
くっさらかす:腐らせる・けなす 「よかぶっおっで くっさらかせっ くれた」(ええ格好しているのでけなして
やった)
くっさるい・くっさるっ:腐れる
くっされ:腐敗物
ぐっすい:ぐっすり 「肌持(はだも)っが 良(ゆ)なっぐっすい 勉強(べんきょ)部屋 [福冨野人]」
くっのごれ:物品などで返礼しないで口先だけのお礼
ぐつっ:ぐいっと飲む 「養子(よし)亭主(とのじょ) 愚痴(ぐぜ)は焼酎(しょちゅ)
とめ ぐつっ飲(ぬ)っ [石田霜降]」「盗焼酎(ぬすっとじょちゅ) ぐつっ飲(や)ったや 米酢(こめず)じゃっ [福山吉連]」
くっどめ:口止め 「口止(くっど)めを 焼酎(しょちゅ)がすっぱい 言散(ゆち)らけっ [田中栄泉]」「口止(くっど)
めを 焼酎(しょつ)い全部(すっぱい) 吐(は)かされっ [吉岡道場]」
ぐっとんゆわん:一言も言わない
くっのうけわろ:おしゃべり
くっべた:口下手 「賀状(がじょ)でな あん口下手(くっべた)も 見事(みご)て文(ぶん) [松田一雄]」「口下手
(くっべた)ん 祝辞が咳(せっ)で 間(ま)を繋(つ)ねっ [福原福多]」
くっよじょ:食事療法・食事制限 「口養生(くっよじょ)が どしてん出来(でけ)じ 肥(こ)えむくっ [吉岡道場]」
「口養生(くっよじょ)は せじ治癒(なお)らんにゃ 藪医者(やぶ)ち言(ゆ)っ [市来流星]」
くつらし:窮屈である・狭苦しい 「兎小屋(うさっご)へ 窮屈(くつら)し寝床(とこ)ん 子分限者(こぶげんしゃ)
[入来創雲]」「玉の輿 窮屈(くつら)し家風(かふ)い 苛(こな)されっ [鞆田紅花]」
くつるっが え:生計にゆとりがある 「くつるっが 良(よ)か時(と)か顔(つら)を 見せもせじ [井手上政暎]」
くて:食べてくれる人 「亭主(とと)ん料理(じゅい) 珍(めずら)し味(あっ)で 食手(くて)が無(の)し [有川南北]」
「食手(くて)ん無(な)か 熟した柿(かっ)の 見事(みご)てこっ [樋渡草団子]」
くで:食いごたえ・食いで
くとい・くとっ:食い終わる 「見比(みくら)べっ 食終(くと)やせんとい 児(こ)あ僻(ひが)ん [内村仏心]」
「食終(くと)ったや 下戸はちょいちょい 時計(とけ)ゆ見(み)っ [津留見酎児]」
くどか・くで:諄い 「諄(く)で注文(ちゅもん) 下手(へた)な床屋い 坊主(ぼ)じされっ [福永四球]」「何(な)ゆ
言(ゆ)たか 社長(しゃちょ)も分からん 諄(く)で訓示 [柳村遊月]」
くとらん:食べきれない 「礼(で)を言(ゆ)たや 食(く)とらん野菜(やせ)が 毎日(めにっ)来(き)っ [平田智子]」
「食(く)とらんち 真似農業(さ)か野菜(やせ)を 提(さ)げっ来(き)っ [安藤孟宗竹]」
くにき・くにっか:食べ難い 「終戦の 苦労(くろ)を語(かた)れば 食難(くに)くなっ [津留見酎児]」
くにげ:食い逃げ 「食逃(くに)げじゃち 追掛(うか)けた客(きゃっ)も 戻(もど)っ来(こ)じ [泊 白水]」
くのこし:食べ残し くのこす:食べ残す 「食残(くのこ)しの 団子
(だご)ん周囲(ぐる)ゆば 蟻(あい)が回(め)っ [福山吉連]」「小鍋(こなべ)料理(じゅ)ゆ またも食残(くの)けた 老夫婦(おんじょみと) [樋渡草団子]」
ぐのみ・ぐのん:鵜呑みにする 「親よっか ネットん言事(ゆこ)つ
鵜呑(ぐの)みしっ [池上歌子]」「儲(も)け話(ばな)す 欲(よっ)の深(ふ)け亭主(て)しゃ 鵜呑(ぐの)みしっ [西 萌]」
くばい・くばっ:配る 「派遣村 気力(あや)ん無(な)か衆(し)い 情(じょ)を配(くば)っ [山下矢絣]」「集(あつ)
むいが 何処(ど)け配(くば)っとか 義援金 [内野茶柱]」
くびい・くびっ:括る 「夫婦(みと)喧嘩 送(おく)い先(さっ)の無(ね) 荷を括(くび)っ [つくし]」
くぶっ:くべる・燃やす 「傘焼(かさや)っで 爺(じ)の洋傘(だんがさ)を 焼(く)べた孫 [中間紫麓]」「理由
(わけ)有(あ)いの 手紙(てが)まそろいと 火い焼(く)べっ [田中栄泉]」
くぶっ:俵叺(たわらかます) 「未(ま)だ丈夫(じょっ)ち 叺(くぶ)く担(かた)めっ 車(くい)め積(つ)ん [宮下珍竹]」
くぼ:臼に入れる単位 「一臼(ひとくぼ)で 痩せが餅搗(もっつ)きゃ 息(せ)が切(き)れっ [小森寿星]」「老人
(おんじょ)所帯(じょて) 食人(くて)も居(お)らんて 餅(も)つ三臼(みくぼ) [蕨迫四郎]」
くほで:食い放題 「里帰(さともど)い 食放題(くほで)食(く)た上(う)へ 持(も)っ限(かぎ)い [上山天洲]」
「仕事(しご)ちゃせじ 口答(ふてご)ちゃ吐(か)えっ 飯(め)しゃ食放題(くほで) [仮屋一発]」
くぼん:窪む・凹む 「祝(ゆえ)続(つづ)き 妻(かか)は遣(や)い繰(く)い 目が凹(くぼ)ん [入来創雲]」「師走
(しわす)風 女房(かか)も辛(きし)かろ 目が凹(くぼ)ん [有川南北]」
くみっ:食べ方・食べる方法
くもい:曇り 「一点の 曇(くもい)も無(な)かて 疑(うた)ご女房(かか)
[澤津乙名]」「花曇(はなぐも)い 女房(かか)ん血の病(びょ)を 引(ひ)っ出(だ)せっ [有川南北]」
くもん:食べ物 「拉致されっ 食物(くもん)ずい贈(や)っ 妙(す)だ出費(だしめ) [渡 純光]」「着(き)い物(もん)
も 食物(くもん)も女房(かか)が 下知(げ)つばしっ [枦山一球]」
くる:狂う 「過ぎた酒 大事(でし)な人生(じんせ)ゆ 狂(くる)わせっ [満留ぐみ]」「若(わ)け時(とっ)の 馬鹿
が人生(じんせ)ゆ 狂(くる)わせっ [萬福平次]」
くるわすい・くるわすっ:狂わせる 「ミニん膝(ひ)ぜ 勘が狂(く)る始(で)た 呆(ぼ)え箸戦(なんこ) [津留見一徹]」
「メタボ女房(かか) 狂(く)る筈(は)じゃなかて 秤(ちき)い小言(ぐぜ) [樋口一風]」
くやい・くやっ:崩れる 「不況風(ふきょかぜ)い 列島(れっと)が崩壊(くや)い 音がしっ [岩崎美知代]」
くやす:壊す 「夫婦(みと)喧嘩 気力(あや)が有(あ)い過(す)ぎ 障子(しょ)ず壊(く)えっ [大西学老]」「新
(に)か秤(ちき)ゆ 三日で壊(く)えた 肥満(だんべ)夫婦(みと) [石田霜降]」
くやっ:公役・共同奉仕作業 「郷中(ごじゅ)公役(くやっ) あらかた済めば 茶どん飲(ぬ)っ[永徳天真]」
「アスファルて 出席(ほ)すといだけん 郷中(ごじゅ)公役(くやっ) [石塚律子]」
くやん:悔やむ 「奪合(ばこ)たどん 今(い)めなっ悔(く)やん 厳(いみ)し女房(かか) [諸木小春]」「悔(く)やんでん
土下座なんどじゃ 消(き)えん過去 [福冨野人]」
くやん:香典 「新(に)け金(ぜん)で 準備(しこ)た香典(くやん)ぬ 姑(ば)が叱(く)るっ [米元年輪]」「香典
(くやん)ぬば 立て替えさせっ 平然(しれっ)しっ [米元年輪]」
くやんのざ:弔問の座 「悔(くや)んの座(ざ) 挨拶(えさ)ちゃ涙(なんだ)が 言(ゆ)
っくれっ [平瀬芙蓉]」
くゆい・くゆっ:崩れる
くよ:供養 「遺産どま 全部(すっぱい)貰(も)ろっ 供養(くよ)はせじ [稲留明天]」「針供養(はいくよう) 豆腐
(おかべ)ん供養(くよ)は ち忘(わす)れっ [新原幹竹]」
ぐら・ぐらご・ぐらんご:競争 「アナログと 生(い)きい競(ぐら)ごち 弱弱(よと)し声 [鶴田昌憙]」「徒競走
(はしいぐら) 凄(わっ)ぜか速(はや)か 短躯(こじっくい) [上池酔人]」
くらか:暗い 「送(おく)ろかい 言(ちゅ)たや暗(くら)かで 良(よ)かち言(ゆ)っ [井上郷楽]」「暗(くら)か娑婆
(しゃ)べ 寛平(かんぺい)どんの 弾(はず)だ声 [有川南北]」
ぐらし・ぐらしか:可哀相な 「愛されっおっち思(おも)ちょい可哀相(ぐら)
し(亭主(てし)」「辞(や)むい前油(あぶら)ん切れた哀(ぐら)し五体(ごて)[瀬戸口抱洋]」
くらすみ・くらすん・くらやん:暗闇(くらやみ) 「まっくらすん」(真っ暗闇)
「暗闇(くらすん)の キスで火が付(ち)て 共白髪(ともしたが) [永田酒楽]」「省エネち 暗闇(くらす)み婆
(ばば)は テレビ見(み)い [野村三味]」
くらぶい・くらぶっ:比べる
くらわす・くらわすっ:殴る 「止(や)まん議(ぎ)い 帰(もど)い暗闇(くらす)み 叩(くら)わせっ [中村雲海]」
くらん:立ち去る・くらます 「狡(ずっ)ね奴(わろ) 野良(はい)の花木(かぼっ)も 盗(と)っくらん [倉元天鶴]」
「出(で)っくらめ 言(ちゅ)たや自動車(くいま)も 持(も)っくらん [小森寿星]」
くりっ:くるりと・転倒するさま 「犬(いん)と猫 小路(こしゅっ)でくりっ 後返(あとがえ)っ [山田竜生]」
「後(うし)とせえ くりっいこそな ビール腹 [西迫順風]」
ぐりっ:すっかり 「こげな俺(お)い ぐりっ嵌(うた)った 女房(かか)も女房(かか) [井原東亀]」「恐(お)ぜ梅雨
(ながし) 地球(ちきゅ)ん生皮膚(なまがわ) ぐりっ剥(へ)っ [岩崎美知代]」
くりったん:即死・急死 「酔(よ)くれぼい 吸(す)い付(ち)た蚊どま くりったん [永徳天真]」
くる:叱る 「遅(お)せ運転(まく)い 紅葉(もみ)ず若葉(わかば)が 叱(く)るたくっ
[花園ちづ]」「殿様(とのさあ)を 家老(かろ)が叱(く)るちょい 舞台裏 [小森寿星]」
くるい・くるっ:呉れる 「金(ぜん)相談(そだん) 呉(く)るい覚悟(かっご)で 出(だ)せっやっ [岩崎美知代]」
「親おへ言(ゆ)なち 婆(ば)さんが呉(く)るい 小遣金(こつけぜん) [栫 路人]」
ぐるい:周囲・周り・傍ら 「夫婦(みと)喧嘩周囲(ぐる)や楽(たの)しゅみ
耳(み)む立(た)てっ [仮屋一発]」「咳(せ)くしたや 周囲(ぐるい)の人(ひと)ん 目が集(たか)っ [渡辺比呂子]」
くるし・くるしか:苦しい 「貧楽(ひんだっ)が 苦(くる)しゅなったか 子い虐待(あた)っ [平松鉄夫]」
くるじっ・くろじっ・くろづっ・くんじっ:俯(うつむ)く 「俯(くろじ)
って 涙(なんだ)を隠(か)きた 悪戯坊主(われこっぼ)」「諄(く)で説教(せっきょ) 子供(こど)ま俯(くんじ)っ 舌を出(で)っ [松崎友彦]」
くるたくい・くるたくっ:叱り散らす 「気分次第(しで) 叱(く)るたくったい 好(す)っ言(つ)たい [楠八重渓流]」
「人前じゃ 優(やさ)しが自宅(うっ)じゃ 叱(く)るたくっ [澤津乙名]」
くるっ:呉れる 「呉(く)るっ言(ちゅ)で 貰(も)ろが使(つ)こわん 給付金 [弓場正巳]」「年金ぬ 全部(ずるっ)
呉(く)るっで 亭主(とと)は好(す)っ [鎌田小町]」
くるわるい・くるわるっ:叱られる・小言を言われる 「庇(か)ぼな言(ちゅ)っ 孫と連(つ)れぶし 叱(く)るわれっ
[上籠若菜]」「社長(しゃちょ)どんの 学歴(がくれ)く聞(き)たや 叱(く)るわれっ [倉元天鶴]」
くれ:暗い 「イチローの ヒットよか多(う)け 暗(く)れニュース [西ノ原一句]」「少(ちっ)と暗(く)れ 場所で
手相見(てそみ)あ 客(きゃ)くば待(ま)っ [永徳天真]」
くれ:位
くれ・ぐれ:ぐらい 「風邪ぐれで 止(や)めがないかち 瓶ぬ出(で)っ [楠八重渓流]」「塵(ごん)ぐれじゃ け
死しませんがち 不精(ふゆ)な妻(かか) [樋口一風]」
くれ・くろか:黒い くろ:黒く 「一(いち)ころで 虜(といこ)いなけた
黒(く)れ瞳(ひとん) [有川八味]」「茶髪(ちゃは)つ叱(が)っ わがあ白髪(したが)を 黒(く)ろ染(そ)めっ [田中五郎太]」
くれちぎっ:食いちぎる 「踵(どげん)ぬば 新(に)け革靴(かわぐっ)が 食(く)れちぎっ [下本地郷二]」
くれちっ・くれつっ:食らいつく・食いつく 「涙目(なんだめ)で 親父(おや)じ喰(く)れ付(ち)た 悪戯坊
(われこっぼ) [上山天洲]」「息(いっ)もせじ 蛇口(じゃぐ)ち食(く)れ付(ち)た 昨夜(ゆべ)ん虎 [花園ちづ]」
くれっ:暮らす 「老夫婦(おんじょみと) 手綱加減で 丸(ま)る暮(く)れっ [入来創雲]」「定年(やめ)た亭主(とと)
妻(かか)ん溜息(うちっ)と 日(ひ)を暮(く)れっ [多田一行]」
くろ:食らう 「久振(さしかぶ)い 妻(かか)い動悸(とため)っ 蹴(け)ゆ
食(く)ろっ [捨禄]」「女房(か)け食(く)ろた 青痣(つぐろじん)ぬば 事故ち言(ゆ)っ [津留見一徹]」
くろ:苦労 「苦労(くろ)をしっ 仕送(しおく)ゆすれば 子はデート [入来創雲]」「俺(お)ゆ振った 罰(ばっ)よ
亭主(とのじょ)で 苦労(くろ)をしっ [村田子羊]」
くろたくっ:叱りとばす 「厳(いみ)し女房(かか) 寝言(ねごっ)ずい亭主(て)す 叱(く)ろたくっ [前村泰山]」
くろぢょか:焼酎を温める土瓶 「管巻(じじら)掘(ほ)い 疲(だ)れた黒土瓶(くろぢょか) 盃(ちょ)く伏(ふ)せっ
[蕨迫四郎]」
くゎ:鍬 「天職(てんしょっ)ち 四の五の言(ゆ)わじ 鍬(くゎ)をば振(ふ)っ [深道好之]」「夕方(よのいもて)
星が出たどち 鍬(くゎ)を洗(あ)るっ [小倉牛哲]」
ぐゎい:同等・同じ 「乳房(ちち)ん差で 同等(ぐゎい)をば裁(さ)べた 徒競走(ときょそう) [津留見一徹]」
「呆(ぼ)え言(つ)たや 父(ちゃん)と同等(ぐゎい)じゃち きし吐(か)えっ [楠八重渓流]」
くわし・くわしか:詳しい 「詳(くわ)し事(こ)ちゃ 知(し)たん言(ちゅ)ながあ すい噂 [栫 路人]」「昼メロが
不倫ぬ詳(くわ)しゅ 教(いっか)せっ [諸木小春]」
くゎし:火事 「火事(くゎし)ち騒動(そど) 煙(けむい)の原因(もと)あ 殺虫剤(さっちゅざい) [米元年輪]」
「早鐘が 直(たっち)き集(よ)れち 村ん火事(くゎし) [稲田切株]」
くゎじ:食べず 「花火(ひやなっ)の 音(お)て夕飯(いめし)どま 食(くゎ)じ走(はし)っ [大脇保子]」「飯(めし)
も食(くゎ)じ ごろたん寝転(かや)い 一年生(いっねんぼ) [澤津乙名]」
くゎすっ:食わせる 「嗅(かず)でかあ け死(し)ませんめち 亭主(と)て食(くゎ)せっ [上池酔人]」「高(た)け鰯
(いわ)す おてちき食(くゎ)せた 穂垂(ほだ)れ料理(じゅい) [米元年輪]」
くわたっ:態々・特別に 「ボーナス日 態々(くわたっ)女房(かか)が 御礼(ごれ)を言(ゆ)っ [深道好之]」「遺言
(ゆおっ)じゃち くわたっ海(うん)に 灰(へ)をば撒(め)っ [上村牛歩]」
くゎどい:鍬を使った農作業 「久さしか振(ぶ)い 鍬取(くゎど)ゆして肩(か)て 灸(え)つ据(す)えっ [上池酔人]」
「退職(やめ)たなあ 妻(かか)あカルチャー 俺(お)や鍬取(くゎど)い [楠八重渓流]」
ぐゎらっ:残らず・全て 「鵯(ひよどい)が 菜園畑(さえんばっけ)を ぐゎらっやっ [二見愚楽満]」「台風
(うかぜ)奴(わろ) 葡萄棚どま ぐゎらっやっ [尾崎若狭]」
くゎん:食べない 「小(ちん)け時(とっ) おてちき食(く)たで 食(くゎ)ん唐芋(かいも) [埀野剣付鶏]」
ぐゎんたれ:役立たず・お粗末なもの 「グァンタレも 横杵者(よんごもん)言(つ)う 名を残(の)けっ
[茶恋児]」「梅雨(なが)し入(い)っ シートを被(かぶ)い ぐゎんたれ家(え) [米元年輪]」
くん:組む 「四(よ)ち組(く)んと 乳房(ちち)が邪魔(ま)じない 女(おなご)相撲(ずも) [鈴木芳子]」「肩を組
(く)ん 校歌で締めた 同窓会(どうそかい) [永徳天真]」
くん・ぐん:計画 「日曜(にちよ)農業(ざっ) 計画(ぐん)通(ど)い女房(かか)が 使(つ)け回(ま)えっ [北村虎王]」
「計画(ぐん)立(た)てあ すいがどもこも 金(ぜん)が無(の)し [新田フサ]」
ぐん:茱萸(ぐみ) 「鬼火講(おねっこ)で 股張(またば)い茱萸(ぐん)の 棘(と)ぐ食(く)ろっ [入来義徳]」
くんじゅ:九十 「九十(くんじゅ)婆(ば)ん 知恵ん袋を 宝(たか)れしっ [折田さくら]」「婆(ば)は九十歳
(くんじゅ) 亭主(て)しゃ青年(にせ)んまま 額(が)きはまっ [入来院彦六]」
くんだい:下り・下る 「言放題(ゆほで)言(ゆ)っ 胸は下(く)んだい 気が晴(は)れっ [原田菊男]」
くんたつい・ぐんたつっ:計画する 「好青年(よかにせ)は 外(は)じっ合(ごう)コン
組(ぐ)ん立(た)てっ [新地十意]」「花見(はなん)ぬば 咲(さ)かん内(うっ)かあ ぐんたてっ [田中末木]」