おんじょどいの小屋

薩摩狂句道場

表現力を高める (「渋柿」第663号より) 永徳天真

作品は作り手(作者)が生み出していますが、そこには何を詠もうとしているかという作者の意図がないといけません。
その意図とは、ある事象について作者がどう思ったのか、その気持ちであったり、どのように考えるかといった主張でもあります。
しかし作句では、たった十七文字でその意図をどう表現するかが勝負どころとなるのですが、読み手に理解されるようにと、あれもこれもと道具立ての多い表現になったり、肝心な要点(郷句味)が抜けた説明や報告の作品になることも多く、そうならないように「上手く表現できないものか」と、多くの人が作句に悪戦苦闘しています。
また作り手の一方には読み手がいて、この読み手が作品を評価しています。作品にこめられた作り手の思いが、読み手に伝わり、共感される作品となる鍵は表現力だと思います。
それはスポーツの練習と同じように、他人の作品に学んだり、常に作句をする日々の積み重ねと努力しかないと思います。
作品の評価には、読み手の理解力も多少は影響を及ぼしますが、誰もが理解できる作品をして要求されるのは、その表現が簡潔明瞭であることだと思います。
郷句味については、料理の味付けにも似ていて、味覚と同じように微妙なところがあるようです。薄味・濃い味・プロの味・おふくろの味などと味にもいろいろあるように郷句味も様々ですが、作り手の感じる心が味付けとして表現されているかどうかということです。当然味気のない句では共感は得られませんので、味付けの一工夫が必要になります。
次に、郷句味の足りない作品に少し味付けをしてみましたので参考にしてみてください。

芋焼酎(いもじょちゅ)が お清酒(さけ)よっかも 高価(た)こけなっ
酒よっか 高価(た)こなっ焼酎(しょちゅ)が きし威張(いば)っ

ブランドを 半額(はんがっ)以下(いか)で ゲットしっ
ブランドを 半額(はんがっ)以下(いか)で 買(こ)たち騒動(そど)

陽(ひ)が回(まわ)っ 昼寝(ひんね)ん木陰(かげ)も 照(て)いでけっ
陽(ひ)が回(まわ)っ 昼寝(ひんね)は木陰(かげ)を 追(う)っ移(なお)っ

薄(う)しなった テレビ寿司ネタ 俺(おい)が影(かげ)
俺(おい)が影(かげ) テレビと同等(ぐゎい)で 薄(う)しけなっ

次の句は表現に見直しが必要な句です。前からの4句は「深夜(よな)け目が冴ゆ」「親が準備(しこ)」「どこず見(み)すとか」「上手(じょし)な看護師」と、言葉の止め方や縮め方に難があるように思います。最後の句は、聞いただけでも分かるように、平易な表現の方がよいのではないかと思います。表現を少し変えてみましたので参考にしてみてください。

きっ歯痒(しゃが)い 深夜(よな)け目が冴ゆ 半端(はんぱ)焼酎(じょちゅ)
半端(はんぱ)焼酎(じょちゅ) 歯痒(はが)いか夜中(よな)け 目が冴(さ)えっ

子ん新世帯(しょて)い 箸一本(はしいっぽん)も 親が準備(しこ)
新世帯(しんじょて)い 箸(はし)ずい親が 準備(しこ)っやっ

ミニ流行(ばや)い どこず見(み)すとか 短(み)じこなっ
ミニ流行(ばや)い どこずい見(み)すっ とか知(し)れじ

注射(ちゅしゃ)打(う)っ 上手(じょし)な看護師 目でご礼(れい)
看護師の 上手(じょし)な注射い 目で御礼(ごれい)

天上(てんじょ)から 黒星(くろぼ)すもろっ 荒(あ)れた相撲(すも)
座布団が やんやん舞(も)ちょい 荒(あ)れた相撲(すも)