栫 路人 |
頃合(ころ)を見(み)っ 下戸はそろいと 座を抜(ぬ)けっ |
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褪(さぎ)た服(ふ)き 警備が睨(ねぎ)い 貯金(ぜん)下(お)ろし |
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長生(ながいっ)の 耳(みん)じゃち言(ゆ)たが 先(さ)き逝(い)たっ |
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言出(ゆで)たなあ 一歩も引(ひ)かん 女房(か)け折(お)れっ |
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ゴルフ焼け じゃってごまけた 野菜(やせ)作(つく)い |
有川南北 |
夏(なっ)が来(き)っ 短パン娘(おご)ん 眩(めは)り脚(あし) |
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洗濯機 朝早(あさは)よ亭主(おや)ず 裸(はだ)けしっ |
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慈雨(うれ)ん玉 里芋(いも)ん葉先(はさっ)で 踊(おど)ゆしっ |
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天も高(た)こ 秋刀魚でごいと 脂(あぶら)ぎっ |
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魔女ん如(ご)っ 爪どん染(そ)めっ 料理(じゅ)らん嫁 |
弓場正己 |
我(わ)が家(や)でん 談合をして 亭主(て)し向(む)こっ |
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夜行バス 鼾(いび)きゃ一人(ひとい)も 寝(ね)せじ着(ち)っ |
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総入歯(がんぶい)じゃ 女房(か)け歯は立(た)たん 口諍(くっいさ)け |
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こん金(ぜん)が 何処(ど)け行(い)っどかい 募金箱 |
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総選挙 世が変(か)わいよな 騒動(そど)いなっ |
堂園三洋 |
遣(や)い手孫 ネコフンジャッタ 誠(まこ)ち上手(じょし) |
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歯の分(ぶん)な 凄(わ)ぜ丈夫(じょっ)じゃいが 無(な)か御馳走(ごっそ) |
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欲(ほ)し品(しな)を 取(と)られっ悔(く)やん タッチん差 |
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御絞(おしぼ)いが 出たどん後(あと)は 素茶(すじゃ)一杯(いっぺ) |
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切手をば しっかい舐(な)めっ ラブレター |
永徳天真 |
降(ふ)い出(で)たが 済んだ済んだん 郷中(ごじゅ)公役(くやっ) |
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禿具合(ぐあ)や 社長やっどん まだも平(ひら) |
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面影あ もう無(ね)田舎(いな)けも ビルが建(た)っ |
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酒癖が 悪(わ)りで飲(の)ん方(か)て 誘(さそ)や無(の)し |
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冴(さ)えん脳(の)い 句作(づく)や焼酎(しょちゅ)ん 加勢(かせ)が要(い)っ |
植村聴診器 |
三食(さんしょっ)と 昼寝(ひんね)が付(ち)ちょい 職(しょっ)が欲(ほ)し |
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一代(いっで)農業(さ)く 就職場(しゅうしょっ)べした 子を拝(おが)ん |
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年金日 忘(わす)れちょった態(ふ) 見栄を張(は)っ |
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金(ぜん)が無(ね)な 何(ない)つけ苦情(くじょ)ん 息子(こ)い怖(びび)っ |
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整形で 手を入れた顔(つら) 子で露見(ばれ)っ |
天 |
あばてんね 客(きゃ)きやれ悩(なや)ん トカラ列島(じま) [福原福多] |
地 |
娘(こ)ん悩(なや)ん 父親(おやっ)譲(ゆず)いの 短(みし)け足 [中囿和風] |
人 |
鏡(かが)む見て 低鼻(べっさ)ゆ悩(なや)ん 我家(やど)ん女房(かか) [北村虎王] |
五客一席 |
肥満(だんべ)妻(かか) 痩(や)せたや皺で また悩(なや)ん [前村幸治] |
五客二席 |
悩(なや)んどま 一(ひと)っも無(ね)よな 鼾(いび)くけっ [新地十意] |
五客三席 |
嫁(い)ことせん 娘(むいめ)い悩(なや)ん 老夫婦(おんじょみと) [松元清流] |
五客四席 |
給料(はれ)もよし 上背(うわぜ)もあいが 毛が悩(なや)ん [おんじょどい] |
五客五席 |
披露宴(ひろえん)に 悩(なや)ん到頭(ごっすら) 牛(べぶ)を売(う)っ [入来創雲] |
選者吟 |
恥(げん)のして ひといで悩(なや)ん 痔の病(やんめ) |
横綱(東) |
峠(とげ)ん先(さ)き 見えた灯(あか)いに ほっとしっ [西ノ園ひらり] |
横綱(西) |
越えた峠(とげ) 徹夜ん看病(かびょ)ん 疲(だ)れも飛(つ)っ [楠八重渓流] |
大関(東) |
ぼろ車(ぐいま) 峠(とげ)ん坂道(さかみ)ち 駄々(ねじゅ)食(く)ろっ [新地十意] |
大関(西) |
峠(とげ)三(みっ)つ 越(こ)えっ息(い)く付(ち)た 夜逃げ夫婦(みと) [津留見一徹] |
関脇(東) |
今日(きゅ)が峠(とげ)ち 爺(じ)の枕元(まくらも)て 額(ふて)が集(よ)っ [樋渡草団子] |
関脇(西) |
ここが峠(とげ) 不況(ふきょ)い社員と じっ堪(きば)っ [中囿和風] |
小結(東) |
過疎んなっ 峠(とげ)ん地蔵(じぞ)さあ 藪(や)べ埋(いか)っ [二見愚楽満] |
小結(西) |
爺(じ)が米寿 山坂峠(とげ)を 越えた祝(ゆえ) [西迫順風] |
筆頭(東) |
今が峠(とげ) 並(な)るだ孫子(まごこ)は ただ祈(いの)っ [松元清流] |
筆頭(西) |
峠(とげ)を其処(そ)け 逆捻(さかね)ず食(く)ろた ぼろ車(ぐいま) [上山天洲] |
二枚目(東) |
峠(とげ)ん茶屋 挽臼(ひっう)す残(の)けっ 藪(や)べけなっ [有馬純秋] |
二枚目(西) |
へとへとが また元気付(ぢ)た 峠(とげ)ん茶屋 [上薗佳笑] |
三枚目(東) |
交替で 今が峠(とうげ)ち 寝(ね)らじ看病(かびょ) [盛満椒平] |
三枚目(西) |
母親(はほ)が待(ま)っ 我家(わがや)ん峠(とうげ) 灯(ひ)が見(み)えっ [永里つる女] |
四枚目(東) |
俺(おい)共(ど)みな 峠(とうげ)が見(み)えん こん不況 [佐伯山神] |
四枚目(西) |
峠(とげ)い立(た)っ 家出は止(や)むち 思(お)め直(な)えっ [樋口一風] |
五枚目(東) |
今日(きゅ)が峠(とげ) 医者ん宣告(せんこ)か 三月(みつき)前 [石塚律子] |
五枚目(西) |
幽霊が 出没(で)っ言(つ)峠(とうげ)は 急(いそ)っ足 [中村雲海] |
六枚目(東) |
夏(なっ)バテい 今が峠(とうげ)ち 活(か)つ入(い)れっ [諸木小春] |
六枚目(西) |
老朽車 峠(とげ)を越(こ)すれば 新車並(な)ん [前村幸治] |
七枚目(東) |
貧乏(びんぶ)所帯(じょて) 今が峠(とげ)じゃち 頑張(きば)い夫婦(みと) [澤津乙名] |
七枚目(西) |
人生の 峠(とげ)は未(ま)だじゃち 傘寿爺(じい) [井手上政暎] |
八枚目(東) |
中古車が やっと登った 厳(き)ち峠(とうげ) [福山吉連] |
八枚目(西) |
峠(とげ)ん茶屋 婆(ばば)ん煮染(にし)めが 客(きゃ)く寄(よ)せっ [原田菊男] |
親方吟(東) |
坂道(さか)男(おとこ) 亀割峠(かめわいとげ)で またも抜(に)っ [吉岡道場] |
親方吟(西) |
峠(とげ)ん茶屋 娘(おご)が嫁(い)たなあ 売(う)いが減(へ)っ [入来創雲] |
また夜中(よな)け 帰(もど)や言訳(ゆわけ)ん 上手(じょ)しゅ連立((ての)っ [原田菊男] |
やっせんぼ やっと誘(さそ)たて つれね返事(へし) [西ノ園ひらり] |
後妻(あと)が嫁(き)っ 派手な家風(かふ)いな 迷(まよ)た精霊(しょろ) [新地十意] |
恐(お)じかった 父親(ちゃん)の背中も 小(こ)もけなっ [郷田悠々] |
息子(こ)が家(え)も 嫁女(よめじょ)ん家風(かふ)じゃ 寄(よ)い難(にく)し [吉岡道場] |
夫婦(みと)喧嘩(げんか) まだ勝負(しょ)ばつかじ 五十年 [中間紫麓] |
彼岸(ひがん)団子(だご) お精霊(しょろ)さあよか 孫が先(さっ) [久永桂心] |
敬老会(けいろかい) 増(いみ)い人数(にんず)い 年齢(と)す上(あ)げっ [山路野菊] |
亭主(てし)の欠点(あら) 他人が言(ゆ)えば 恐(わ)ぜ睨(ねぎ)い [佐伯山神] |
職(しょ)か無(な)かて 出来(でけ)た婚(こん)じゃろ 早速(も)娶(も)ろっ [中囿和風] |
首(く)びょ振(ふ)いが 小節(こぶ)しゃ回(まわ)らん 爺(じ)の演歌 [木佐貫白猫] |
宅(や)でな遠(と)え 悠々自適(ゆうゆうじてっ) 言(ちゅ)う暮らし [石塚律子] |
夫婦(みと)諍(いさ)け 庭ん蟋蟀ぎみ共(ど)が 黙(だま)い込(く)っ [上山天洲] |
一人(ひとい)住(ず)め 悩(なや)んな猫が 聞(き)っくれっ [西ノ園ひらり] |
何(ない)の用事(ゆし) 夜中(よな)け婆(ばば)奴(わろ) 手を引張(そび)っ [堂園三洋] |
下戸(げこ)が家(え)で 謎を掛(か)くいが 焼酎(しょ)ちゃ出(で)らじ [有馬湧声] |
朝帰(あさもど)い 謎めた妻(かか)ん 片頬(かたふ)笑(わ)れ [楠八重渓流] |
横(よん)ご杵(ぎね) 子ん横(よん)ごいな 匙(さ)ず投(な)げっ [上山天洲] |
向脛(むかずね)が 二本じゃ足(た)らん 子分限者(こぶげんしゃ) [有馬湧声] |
地鎮祭 供(あ)げた鯛(て)の蠅(へ)を 御幣(しべ)で追(う)っ [入来創雲] |
涼(すず)しかち 思(おも)たや褌(へこ)は 足(あ)し巻付(めち)っ [中囿和風] |
赤字言(ちゅ)が 臍繰(へそく)や増(いみ)い 生魂(いっだまし) [新地十意] |