栫 路人 |
総入歯(がんぶい)ば 外(と)れば八十歳(はちじゅ)が 百歳(ひゃ)き見(み)えっ |
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痩せたとは 良(え)どん入歯も 緩(ゆ)るしなっ |
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検診に 下着も新(に)けと 着(き)っ行(じ)たっ |
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一滴(いってっ)も 飲(の)めじ付合(つっけ)ん 座い混(まじ)っ |
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腹ん虫(む)す 焼酎(そつ)が宥(なだ)むい 癖が付(ち)っ |
有川南北 |
飲(の)ん競(くら)べ 干(ひ)た丼(どんぶい)で 勝負(しょっ)がちっ |
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時(とっ)ならん ドカ灰(べ)が街(ま)つば 塗(ぬ)い変(か)えっ |
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何処ん出生(で)か 尾頭(おかしら)付(つ)っの 土用(どゆ)鰻(うなっ) |
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安価(や)し鰻(うなっ) 不精(ふゆ)な女房(おか)てな うった付(つ)け |
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うな丼ち ただ飯(め)し鰻(うな)ぐ 乗せただけ |
弓場正己 |
浮かれ世い 天罰(てんばっ)が来た 流行(はやい)風邪 |
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母(かあ)ちゃんな マスク美人ち 娘(こ)が揶揄(ちょく)っ |
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亭主(て)しゃ平(ひら)で 裁判員に 女房(かか)がなっ |
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表替え 女房(かか)ん煤(すす)けが 尚(なお)目立(めだ)っ |
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赤提灯(あかちょちん) 請求(つけ)が溜まれば 次(つ)ぎ移(うつ)っ |
堂園三洋 |
新聞と どっちが重(お)びか 多(う)けチラシ |
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焼芋ん 音(お)て走(はし)い出(で)た メタボ女房(かか) |
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子は全員(ずるっ) 農業(さっ)の世襲は 嫌(いや)ち言(ゆ)っ |
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女房(か)け負(ま)けん 筋肉(きんにっ)が欲(ほ)し 夫婦(みと)喧嘩 |
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ボロ家(え)をば レトロち褒(ほ)むい 保険勧誘(とい) |
永徳天真 |
嬉(うれ)し見舞(みめ) いけなこっけち 友達(どし)が来(き)っ |
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爺(じ)の体操(たいそ) あっちこっちで 骨が鳴(な)っ |
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有(あ)い物(もん)で あらつら料理(じゅ)った 女房(かか)ん留守(ずし) |
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下(しも)ネタで 勝負(しょ)ぶすい芸の 将来(さ)か知(し)れっ |
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宿題を すいよな顔(つら)で 句を捻(ひね)っ |
植村聴診器 |
職(しょっ)が無(ね)で 面接(めんせ)ち準備(しこ)た 服(ふっ)が泣(ね)っ |
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立話(たっばなし) 噂は全部(ずるっ) 真実(まこ)ちなっ |
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暴(ほこ)い坊(やっ) 案(あん)の定(じゅ)頭(びんた) うっ穴(ぽ)げっ |
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干(へ)た梅(うんめ) 俄雨(さだっ)が心配(せわ)で 夫(とと)い番 |
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伸(ぬ)っ盛(ざか)い おてちき食(く)子い 四苦八苦 |
天 |
干上(ひや)がっち 鼠(ねずん)も逃げた 倹(つま)し所帯(しょて) [津留見一徹] |
地 |
子分限者(こぶげんしゃ) 倹(つま)し暮(くら)しも 夢があっ [山田竜生] |
人 |
倹(つま)し繰(く)い してん孫いな 緩(ゆる)ん財布(ふぞ) [福原福多] |
五客一席 |
倹(つま)し婆(ば)が ティッシュを一枚(いっめ) ずっ使(つ)こっ [満留ぐみ] |
五客二席 |
一年中(いっねんじゅ) 湯あ臍ずいち 倹(つま)し世帯(しょて) [石塚律子] |
五客三席 |
年金で 倹(つま)し生活(くらし)の 老夫婦(おんじょみと) [西迫順風] |
五客四席 |
倹(つま)し夫婦(みと) 着物(いしょ)は全部(すっぱい) 中国製(チャイナせい) [北村虎王] |
五客五席 |
倹(つま)し女房(かか) 野菜(やせ)も捨(うっす)っ とこや無(の)し [吉丸セツ子] |
選者吟 |
倹(つま)しこっ 出(で)らんチューブを まだ絞(しぼ)っ |
横綱(東) |
今日(きゅ)も遅刻(ちこっ) 社訓も社歌も まだ知(し)たじ [佐伯山神] |
横綱(西) |
近道(ちかみっ)が 凄(わ)ぜ渋滞で 遅刻(ちこ)くしっ [中村木強] |
大関(東) |
飲(の)ん方(か)てな 自慢じゃ無(ね)どん せん遅刻(ちこっ) [郷田悠々] |
大関(西) |
遅(お)す行(い)たや 社長(しゃちょ)ん前しか 席(せっ)が無(の)し [樋口一風] |
関脇(東) |
多(う)け遅刻(ちこ)き ごろいと理由(わけ)も 底を突(ち)っ [石塚律子] |
関脇(西) |
遅刻(ちこ)くしっ じりじりさすい 可愛(む)ぜ彼女 [津留見一徹] |
小結(東) |
遅刻(ちこっ)娘(おご) 仕事(しご)ちゃ碌(ど)きせじ 帰(もど)い化粧(けしょ) [松元清流] |
小結(西) |
代返(だいへん)の 頼(たの)んだ奴(わろ)が 遅刻(ちこ)くしっ [江口紫朗] |
筆頭(東) |
遅刻(ちこ)くしっ 朝飯(あさめ)し弁当(べんと) 半(なか)ら食(く)っ [有馬純秋] |
筆頭(西) |
新婚の ほやほや遅刻(ちこ)く 揶揄(ちょく)られっ [鮫島牧峰] |
二枚目(東) |
遅刻(ちこっ)しっ 掛持(かけも)っ暴露(ばれ)た 待(ま)っ合(あ)わせ [盛満椒平] |
二枚目(西) |
黄泉(さっ)の世(よ)い 行(い)っとも遅刻(ちこっ) 百歳(ひゃ)く越(こ)えっ [中村雲海] |
三枚目(東) |
場所間違(まっ)げ 飲(の)ん方(か)て歯痒(はが)い わぜ遅刻(ちこっ) [諸木小春] |
三枚目(西) |
遅刻(ちこ)くした 課長(かちょ)あ焼酎(しょちゅ)臭(く)せ 息(い)くばしっ [米元年輪] |
四枚目(東) |
妻(かか)ん旅(たっ) 遅刻(ちこ)くすいめち 寝(ね)らじ居(お)っ [津留群志] |
四枚目(西) |
逆(ぎゃく)いじめ 先生(せんせ)や今朝も 遅刻(ちこ)くしっ [弓場正巳] |
五枚目(東) |
遅刻(ちこっ)しっ 上手(じょし)な言訳(ゆわけ)で 誤魔化(ごまか)せっ [日隈英坊] |
五枚目(西) |
義理(ぎい)の見合(みえ) 気分が乗(の)らじ 遅刻(ちこ)くしっ [井手上政暎] |
六枚目(東) |
今日(きゅ)も遅刻(ちこっ) 課長(かちょ)ん睨(にら)んも 平然(しれっ)たん [西ノ園ひらり] |
六枚目(西) |
遅刻(ちこっ)癖 目覚(めざま)しゃ年中(ねんじゅ) 罪(つ)む被(かぶ)っ [小瀬一峻] |
七枚目(東) |
術(じゅっ)ね奴(わろ) 朝は遅刻(ちこっ)で 帰(もど)や一番(いっ) [福山吉連] |
七枚目(西) |
遅刻(ちこ)くしっ そろいと出勤(で)れば 睨(ねぎ)い課長(かちょ) [花園ちづ] |
八枚目(東) |
また奴(あい)か 遅刻(ちこ)くすったあ 大概(てげ)決(き)まっ [伊地知 孝] |
八枚目(西) |
また遅刻(ちこっ) 段々嘘が 上手(じょ)じけなっ [中囿和風] |
親方吟(東) |
門限の 遅刻(ちこく)い小屋で 夜(よ)を明(あ)けっ [入来創雲] |
親方吟(西) |
遅刻(ちこ)くした 罰(ばっ)が校庭(こうて)ゆ また走(はし)っ [吉岡道場] |
やい手言(ちゅ)が 妻(かか)が後(うしと)で 全部(ずるっ)指示(げっ) [小瀬一峻] |
何事(ないごっ)ち 女房(かか)ん一喝(いっか)ち 止(や)ん管巻(じじら) [桜井吹雪] |
仲人(なかだっ)が 内心(ねしゅ)が良(え)言(ちゅ)とか 美人(シャン)じゃ無(の)し [新地十意] |
仲間(どし)の罪(つ)む 悪戯児(てんご)一人(ひとい)で うっ被(かぶ)っ [上山天洲] |
何(なん)言(ちゅ)てん わが家(え)ち女房(かか)は 言(ゆ)ちゃ出張(でば)っ [有馬純秋] |
指(ゆ)び嵌(は)めた 輪ゴムい用事(ゆ)ずば 思(お)め出(だ)さじ [原田菊男] |
相手(えて)も無(の)し 婆様(ばさま)あ猫と 恋(こ)ゆ語(かた)っ [北村虎王] |
三人の 雪花菜(きらし)文殊ん 知恵(ち)へ成(な)らじ [樋口一風] |
こらうなち 亭主(てし)の頭(びんた)ん 蠅(へ)を叩(た)てっ [入来創雲] |
天下(あまくだ)い 金(ぜん)から金(ぜん)に 渡(わた)い鳥(どい) [中囿和風] |
黄泉(さっ)の世(よ)い 行(い)っとも遅刻 百歳(ひゃ)く越(こ)えっ [福原福多] |
自慢話(ぎらばな)し 相槌打(えはう)っ上手(じょし)が 次(つ)ぐ催促(せず)っ [山田竜生] |
妻(か)けすれば 外(はず)れじゃっつろ 男運(おとこうん) [楠八重渓流] |
冗談(はらぐれ)が パッち映(うつ)らん 蛍光灯(けいこうと) [津留見一徹] |
冗談(はらぐれ)を 言(ゆ)おごっもなか 倦怠期 [木佐貫白猫] |
可愛(む)ぜ婿い 何(な)ゆ食(か)すかいち 女房(かか)は騒動(そど) [上山天洲] |
真実(まこっ)かよ 痴漢に遭(お)たち 皺(しわ)くれ婆(ば) [萬福平次] |
そいじゃ無(ね)ち 手伝(こど)いの孫が 下知(げ)つ吐(か)えっ [樋口一風] |
課長(かちょ)ん椅子(い)す 狙(ね)ろちょったとに 肩叩(かたたた)っ [澤津乙名] |
大概(てげ)な句を 色紙(しき)し書(け)た上(う)へ 額(が)き入(い)れっ [津留見一徹] |
癌じゃっで 切除しましょち さらっ言(ゆ)っ [楠八重渓流] |
お手空(てぱら)ち 故意(わざ)と負(ま)けちょい 飲(の)ん平(べ)奴(わろ) [鮫島牧峰] |
倹(つま)すしっ 亭主(とと)が逝(い)てかあ 使(つ)こ思(と)もっ [有馬純秋] |
仏壇(にょうさん)に 嫁ん悪口(あっご)を 久(さ)す語(かた)っ [永徳天真] |
坪単価 値切れば似合(にお)た 柱(はし)てしっ [津曲とっこ] |
冗談(はらぐれ)ち 聞(き)っ流(な)げちょった プロポーズ [石塚律子] |
良(よ)か嫁ん 真似も年中(ねんじゅ)じゃ 疲(だ)れとけっ [樋口一風] |
可笑(おか)し亭主(とと) 真実(まこっ)じゃ無(ね)とか やれ吃(ずも)っ [新森鶏冠] |