三條風雲児 |
病人(びょにん)たろ 屠蘇もお節(せち)も 気が向(む)かじ |
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そばきいの 出し宛(あて)ごちゃい 老鶏(おんじょどい) |
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味噌搗(つっ)の 結戻(いもど)し杵(きね)を 持(も)っ走(はし)っ |
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着ぶくれが ばたぐるでけた レントゲン |
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拉致しちょっ 一時(いちじ)帰国(きこっ)が 歯痒(はが)い家族(けね) |
上田 格 |
長病(ながやんめ) かった途切れた 友人(どし)の見舞(みめ) |
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運動会(うんどかい) 容姿(よし)と格好(かっこ)は 人(ひ)て負(ま)けじ |
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終(しま)い風呂 洗濯物(せんたっもん)ぬ 抱(で)て浴(つか)っ |
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爺(じ)が機嫌(きげん) 孫が来たなあ 元(も)て戻(もど)っ |
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血圧(けつあっ)ち 言(ゆ)ながあ猪口(ちょ)くば 離(はな)しゃせじ |
塚田黒柱 |
こらしたい へっち出(で)っ来(こ)ん 女房(おかた)ん名 |
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居(お)らんよか 良(よ)かろち言(ゆ)よな 亭主(て)しけなっ |
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げざらしか 家(え)じゃち思(お)もたや 成(な)い上(や)がい |
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写メールん 枠(わ)き入(い)いきらん 馬面(うんまづら) |
有川南北 |
分限者(ぶげんしゃ)ん 嬢様(ごいさ)あ大(ふと)か 護謨(ぎった)毬(まい) |
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元朝(がんちょ)かあ 洗濯(せんた)くしちょい 子分限者(こぶげんしゃ) |
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伸び伸びと 育(お)えたやぶんと 勉強(べんきょ)嫌(ぎ)れ |
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福袋(ふっぶくろ) つまや師走(しわす)の 売れ残(のこ)い |
堂園三洋 |
テレビしか 笑(わ)るこっも無(な)か 夫婦(みと)暮らし |
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見舞(みめ)帰(もど)い 焼酎(しょちゅ)を減(へが)むち 言(ゆ)こちゃ言(ゆ)っ |
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流行(はや)ゆ追(う)っ よかぶい女房(かか)が 金(ぜん)ぬ食(く)っ |
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世の中は 真(ま)っ暗闇(くらすん)ち 振(ふ)られ青年(にせ) |
村田子羊 |
乱髪(やんかぶ)い 櫛(く)す貸(か)すかいち ちょくっみっ |
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女湯(おなごゆ)い しれっ入(い)っ来た ニューハーフ |
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鬼火焚(おねっこ)い ダイオキシンち 騒動(そど)をしっ |
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奥(おっ)の深(ふ)け 薩摩郷句にゃ 擾(こな)されっ |
岩崎美知代 |
不浄(ふじょ)な土地(じだ) 通れば背中(せな)け 汗が凍(こ)っ |
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鬼(おん)のよな 心(ねしゅ)で優(こえら)し 声を出(で)っ |
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二段腹(にだんば)れ 針(は)や脂肪(あぶら)ぎい インシュリン |
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洋凧(ようだこ)い 奴(やっこ)が空で 蹴(け)ゆ入(い)れっ |
天 |
吉(きっ)ち言(ゆ)う 方角(ほが)か離婚(わか)れた 女房(かか)が居(お)っ [楠八重渓流] |
地 |
始球式(しきゅうし)き 途方(とほ)ん無(ね)方角(ほが)き 観衆(みて)が沸(うぇ)っ [東 竜王] |
人 |
悪戯坊主(われこっぼ) 道標(みちしるべ)をば 逆(ぎゃ)き向(む)けっ [上瀬明星] |
五客一席 |
釣(つ)いの瀬を 船頭(せんず)は方角(ほが)く 見て決(き)めっ [栫 路人] |
五客二席 |
棟上げん 矢を好(す)かん人(と)ん 方角(ほ)い向(む)けっ [入来創雲] |
五客三席 |
飲(の)ん足(た)らじ 門辺(きど)で方角(ほが)くば 変えた亭主(とと) [深道好之] |
五客四席 |
長(な)げ不況(ふきょ)い 方角(ほが)く失(うし)のた 日本丸 [花牟礼雲雀] |
五客五席 |
自家(え)の方角(ほが)き 上(あ)がい火の手い 飛(つ)で帰(もど)っ [井手上政暎] |
選者吟 |
憑(ち)た狐(きっね) 方角(ほがっ)も知(し)れじ 山(や)め迷(まよ)っ |
横綱(東) |
火傷をば すしこ飾った 花電車 [福冨野人] |
横綱(西) |
額(が)き入(い)れっ 上座(かん)ぜ飾った 特選句 [東 竜王] |
大関(東) |
床様(とこさあ)い 訳(わけ)ん分(わ)からん 石(い)す飾(かざ)っ [上籠若菜] |
大関(西) |
森伊蔵(もりいぞ)は 飾(かざ)いで注(ち)った 安(や)しか焼酎(しょちゅ) [郷田悠々] |
関脇(東) |
掛軸(かけじっ)の 横(よ)け飾(かざ)ろそな 可愛(むぞ)か孫 [津留見酎児] |
関脇(西) |
新築(しんたっ)の 床(とこ)い飾った 宝船 [細山田妙子] |
小結(東) |
ボロ車(ぐい)め ど知(し)れん飾(かざ)ゆ 下(さ)げたくっ [江平光坊] |
小結(西) |
出た御馳走(ごっそ) 飾(かざ)いじゃなかど 食(たも)れ言(ちゅ)っ [永野寛二] |
筆頭(東) |
飾(かざ)い女房(かか) 三歩下がって 亭主(て)しゃ歩(さ)りっ [弓場正巳] |
筆頭(西) |
鼻輪(はなぐい)ち 言(ゆ)おそな大(ふと)か 耳飾(みんかざ)い [満留ぐみ] |
二枚目(東) |
寝(ね)っとこも 無(ね)ごっ飾った 骨董(こっと)好(ず)っ [田原大黒] |
二枚目(西) |
玄関(ふんごん)な 飾(かざ)っ台所(おすえ)は ちんがらっ [樋渡草団子] |
三枚目(東) |
偽物(まがい)とも 知(し)たじ名刀(めいと)ち 床(と)け飾(かざ)っ [上山天洲] |
三枚目(西) |
床(と)け飾(かざ)いごっ 言(ゆ)で嫁(き)たや 嘘も嘘 [安藤孟宗竹] |
四枚目(東) |
派手(は)で飾(かざ)っ 踊(おど)い大太鼓(うでこ)い 祭(まつ)や沸(うぇ)っ [坂口橘風] |
四枚目(西) |
飾(かざ)い餅(もっ) 正月(しょがっ)三日で はっ割(が)れっ [太良木 学] |
五枚目(東) |
煤(すす)け女房(かか) どしこ飾(かざ)ろが みても無(の)し [有村土栗] |
五枚目(西) |
捨(うっ)せ金(ぜん) パソコンなんだ ただ飾(かざ)い [堂園三洋] |
六枚目(東) |
豊祭(ほぜ)相撲(ずも)ん 終(し)めば飾った 五人抜(ぬ)っ [棈松睦酔] |
六枚目(西) |
日本一(にほんい)ち なった牛(べぶ)いな 凄(わ)ぜ飾(かざ)い [福山吉連] |
七枚目(東) |
身は飾(かざ)っ おいが家(え)の内(う)ちゃ 取(と)い散(ち)れっ [崎山典子] |
七枚目(西) |
裏声で 錦(にし)きゅ飾った 島乙女(しまおごじょ) [坂元鶴山] |
八枚目(東) |
意見(ぎ)も言(い)わじ 飾(かざ)いじゃろそな 金バッジ [今釜三岳] |
八枚目(西) |
一人娘(ひといご)い 飾(かざ)い立(た)てちょい 七五三 [野瀬曲尺] |
親方吟(東) |
胴体(ずて)一杯(いっぺ) 飾(かざ)っ馬(うんま)ん 可愛(む)ぜ踊(おど)い [村田子羊] |
親方吟(西) |
亭主(て)しゃ飾(かざ)い 女房(かか)ん名義(なめん)じゃ 議(ぎ)も出(で)らじ [岩崎美知代] |
節穴(とのめ)越(ご)し 目と目が合(お)ちょい 露天風呂 [永徳天真] |
窓(と)を開(あ)けっ 松茸飯(まったけめし)の 匂(かざ)を撒(め)っ [植村聴診器] |
課長(かちょ)なんだ 追抜(うに)っつもいか 大(ふと)か印鑑(はん) [樋口一風] |
わいも飲め 正月(しょがっ)じゃらよち 女房(か)けも注(ち)っ [今釜三岳] |
百薬(ひゃくやっ)が 亭主(とと)い万病(まんびょ)を 背負(かる)わせっ [小森寿星] |
天気しか 書(か)っこちゃ無(ね)よな 爺(じ)の日記 [新地十意] |
定年が また近(ち)こなった めでて新春(はい) [楠八重渓流] |
書留(かっどめ)い 実家(さと)ん方角(ほが)くば 泣(ね)て拝(おが)ん [松元清流] |
寒戻(かんもど)い 半値ん正札(ふだ)を 書(か)っ直(な)えっ [藤後一碧] |
御数(おかず)をば 毒見(どっみ)をすそな 倦怠期 [中村雲海] |
強(つ)え寒(かん)に 朝飯(あさめ)しゃ良(え)がち 不精(ふゆし)女房(かか) [楠八重渓流] |
寒稽古 思(と)もたや隣(つっ)の 夫婦(みと)喧嘩 [福冨野人] |
寒(さ)み言(ちゅ)亭主(と)て 動(いご)けち箒(ほ)くば あてご女房(かか) [猪八重一子] |
良(ゆ)したもん 女房(かか)ん節約(かんじゃ)く 亭主(とと)が飲(の)ん [瀬戸口和八久] |
節約(かんじゃっ)が 水道栓ぬ ひねい切(き)っ [池上黒ぢょか] |
後(あ)て残(のこ)い 計算(さんにょ)保険な 亭主(と)て掛(か)けっ [横手五月] |
受取(も)ろ時(とっ)の 事(こっ)しか言(い)わん 保険勧誘(ほけんとい) [有川南北] |
屈(かご)んだや 直(いっ)き金蝿(きんべ)が 偵察(みい)け来(き)っ [埀野剣付鶏] |
可愛(む)ぜ内緒 孫ん背丈い 屈(かご)ん聞(き)っ [金井一馬] |
女(おなご)所帯(じょ)て 布令(ふれ)あ大声(うごえ)で 昼(ひ)い訪(こと)っ [津留見酎児] |
ごめんなし 訪(こと)れば隣(つっ)が 顔(つら)を出(で)っ [栫 路人] |
注射下手 ごめん言(ちゅ)ながい 刺(さ)したくっ [新地十意] |
医者どんに 注射をすそな 医療ミス [堂園三洋] |
延命の 注射はせんち 爺(じ)の遺言(ゆおっ) [岩崎美知代] |