おんじょどいの小屋

薩摩郷句誌「渋柿」

第563号

雑吟     三條風雲児選

一番槍 こん頃は 悋気(じんき)もせんが 化粧(けしょ)もせじ [新地十意]
二番槍 下戸わろは 横(よ)け座(すわ)ってん 注(ち)じゃくれじ [小森寿星]
三番槍 持(も)たん子にゃ 泣(な)かんが猫じゃ 茶あ入(い)れじ [西 幸子]
四番槍 物忘れ すいが勅語(ちょっご)は 覚(おぼ)えちょっ [栫 路人]
五番槍 玄関(ふんごん)ぬ 入(い)れば黴臭(こしく)せ 単身(ひとい)住(ず)め [弓場正巳]
六番槍 盛皿(もいざら)い 大食(うぐ)れと連(ての)だ 運(ふ)の悪(わい)さ [諸木小春]
七番槍 牛(べぶ)じゃれば 確実(かくじ)ち去勢 された血統(すっ) [郷田悠々]

渋柿集

三條風雲児 田植え疲(だ)れ 亭主(とと)が一人(ひとい)で まっ被(かぶ)っ
出(で)しゃばいが 餌(え)で恵(のさ)っちょい 燕ん雛(こ)
雨ん日い 開(ひ)れた南瓜(かぼちゃ)ん 運(ふ)の悪(わい)さ
貧乏性(びんぶしょ)ん 蜂(はっ)か夜(よ)の入(へ)い 花を飛(つ)っ
相当(じょじょ)ん暇 蝸牛(つんぐらめ)どん 日半(ひはん)観(み)っ
裃(かんしも)を 着(き)すれば似合(にお) そな蟇(ごんぜ)
何(な)ゆばすい 気根(ぎろ)も気力(あや)も無(ね) 日が続(つじ)っ
上田 格 ザーマスは 歩(あゆ)ん振(つっ)かあ 気品(ひん)があっ
連休(れんきゅ)明け 飼犬(けいん)もかった ずん垂(だ)れっ
台所(おすえ)ずい キッチンち名で 椅子(い)す準備(しこ)っ
爺様(じさま)ん代(で) 横杵(よんご)が原因(もと)で 道路(み)ちゃ曲(ま)がっ
必勝ち 鉢巻(はちま)き書(け)たが 寝呆(ねとぼ)けっ
送別会(そべっかい) ためならん衆(と)も 沢山(ずばっ)集(き)っ
背は低(ひ)きが 帯(おっ)が似合(によ)どち 褒(ほ)められっ
有川南北 葉桜い なっかあ過ぎた 春(は)ゆ悔(く)やん
東大ち 聞(き)たや大法螺(うぼら)が 黙(だま)い込(く)っ
繰(く)いの悪(わ)り 店じゃろ直(いっ)き 集金(と)いけ来(き)っ
大工(でっ)の見習(こ)も いま風(ふ)い言えば エンジニア
カタカナで 言えば格好(かっこ)良(え) フリーター
塚田黒柱 誰(だい)が子か 子供(こど)まねっから 禿(は)げちゃこじ
恥(は)ず恥(はっ)ち 思(おも)わん連中(し)どが すい政治
素夫婦(すみ)てなっ うんとうんにゃで 用事(ゆし)が足(た)っ
輸入野菜(やせ) 国内産ぬ 追散(うち)らけっ
医者よっか テレビが言(ゆ)こつ 鵜呑(ぐの)みしっ
参考作品 赤札を オバタリアンな まだ値切(ねぎ)っ [樋之口墨矢]
出来(でけ)ん子を 出来(でけ)ん親父(おやっ)が やれ叱(く)ろっ [中馬美丈夫]
豆腐屋(おかべや)を 一日(ひして)で辞(や)めた 朝寝奴(あさねごろ) [塚田黒柱]
奪合(ばこ)しこん 帯(おっ)じゃなかった 形見(かたん)分け [津留見一徹]
金(ぜん)相談(そだん) 化粧(けしょ)が過ぎたで 借(か)いださじ [津留見酎児]
七草(ななくさ)を 嫁はスーパい 摘(つ)み行(い)たっ [藤後一碧]
聴診器 ペチャパや直(いっ)き 異常なし [堂園三洋]

山椒集 題「潮時(しおどっ)」     上田 格選

潮時(しおどっ)ち 免許を返上(もで)た 喜寿ん爺(じじ) [有馬慶成]
三次会 潮時(しおど)く狙(ね)ろっ 座を抜(ぬ)けっ [棈松睦酔]
次(つっ)の客(きゃ)き よか潮時(しおどっ)ち 帰(もど)い通夜 [福山吉連]
五客一席 座礁(ざしょ)ん船 潮時(しおど)く睨(にら)ん 引張(そび)っでっ [米元年輪]
五客二席 定年ぬ 潮時(しおど)き管巻(じじ)れ 幕(ま)く下(お)れっ [坂元鶴山]
五客三席 潮時(しおどっ)ち 騒動(そど)しっ婆様(ばさま) 湯を沸(わ)けっ [大脇保子]
五客四席 新(に)け世紀(せい)き 良(よ)か潮時(しおどっ)ち 退(ひ)た会長(かいちょ) [大和 渚]
五客五席 潮時(しおどっ)か 議長(ぎちょ)が一声 決(け)つば取(と)っ [弓場正巳]
選者吟 潮時(しおどっ)ち 見たか仲人(なかだ)ちゃ 焼酎(しょちゅ)ち言(ゆ)っ

龍虎集 「時事吟」     有川南北選

浜(は)め腹這(すぼ)た 海豚(いる)け大騒動(うそど)ん 種子島 [米元年輪]
石頭(いしびんた) 遺産石仏(せきぶ)つ うっ破壊(くえ)っ [横手五月]
晩酌(だいやめ)も 美味(うん)も飲ませた 寺尾関 [種子田 寛]
四天王一席 一割(いちわい)も 支持あ無(な)かとい まだ総理 [楠八重渓流]
四天王二席 副知事が 介護ん範(はん)ぬ 世間(しゃ)べ垂(た)れっ [小森寿星]
四天王三席 他県(よそ)んこち 余計(いし)れん議(ぎ)じゃが 都知事殿(とちじどん) [今釜三岳]
四天王四席 考(かん)げよじゃ 運(ふ)も悪(わ)りかった 森首相 [郷田悠々]
選者吟 獲(と)れん海苔(のい) 話(はな)しゃ計画(もと)かあ 紛糾(もめ)でけっ

郷句相撲 題「眉毛(めげ)」

横綱(東) 風呂上(あ)がい 公卿さあ言(ちゅ)よな 女房(かか)が眉毛(めげ) [野間口鈴女]
横綱(西) 西郷(せご)どんに 眉毛(めげ)は似(に)ちょいが 小(ちん)け肝 [米元年輪]
大関(東) 描(け)た眉毛(めげ)が 田舎芝居(しば)ゆば 盛(も)い上(あ)げっ [畑山真竹]
大関(西) 見たぶんで 助平じゃろそな 下(さ)がい眉毛(めげ) [棈松睦酔]
関脇(東) 機密費い 世間の眉毛(めげ)が つい上(や)がっ [鈴木一泉]
関脇(西) 女房(かか)ん眉毛(めげ) 喜怒哀楽(きどあいらっ)で 波(なん)ぬ打(う)っ [津留見酎児]
小結(東) 垂れかけた 眉毛尻(めげじ)ゆぴんち 剃(そ)い上(あ)げっ [大和 渚]
小結(西) 厳(いみ)したろ 眉毛(めげ)どま年中(ねんじゅ) 吊(つ)い上(あ)げっ [樋口一風]
筆頭(東) 朝帰(あさもど)ゆ 逆(ぎゃっ)八(はっ)の字ん 眉毛(めげ)が待(ま)っ [郷田悠々]
筆頭(西) 腕白坊(あまいばっ) ポスタん眉毛(めげ)い 悪戯(わやく)しっ [上山天洲]
二枚目(東) 不器用(ぶちほ)女房(かか) 眉毛(めげ)を片々(かたかた) 墨(すん)ぬ引(ひ)っ [北山如無]
二枚目(西) 午前様(ごぜんさ)へ 眉毛(めげ)が逆立(さかた)つ しちょい女房(かか) [津曲とっこ]
三枚目(東) 西郷(せご)どんの よな大(ふ)て眉毛(めげ)で 臆病者(ひっかぶい) [佐土原 隆]
三枚目(西) 剃(そ)い落(お)てっ そん日そん日ん 眉毛(めげ)をけっ [平中小紅]
四枚目(東) 四面楚歌 総理ん眉毛(めげ)も ずん垂(だ)れっ [坂元鶴山]
四枚目(西) またヒスが 出(で)い前眉毛(めげ)が 波(なん)ぬ打(う)っ [塚田黒柱]
五枚目(東) 腕白坊主(われこっぼ) 昼寝(ひんね)ん姉ん 眉毛(めげ)を剃(そ)っ [山内成泰]
五枚目(西) 立腹(はら)けてん 笑(わ)るっおいよな 下(さ)がい眉毛(めげ) [倉元天鶴]
六枚目(東) 子をば叱(が)い 女房(かか)は眉毛(めげ)ずい 吊(つ)い上(あ)がっ [野瀬曲尺]
六枚目(西) モンタージュ 案(あん)の定(じゅ)眉毛(めげ)で 御用(ごゆ)いなっ [中村雲海]
七枚目(東) 毛虫(ほじょ)んよな 眉毛(めげ)が爺様(じさま)ん 日よけなっ [石野洋々]
七枚目(西) 機嫌(ごっ)の悪(わ)り 時(と)き描(け)た眉毛(めげ)あ 吊(つ)い上(あ)がっ [永徳天真]
八枚目(東) 白(し)れ眉毛(めげ)い 孫はサンタち きし吐(か)えっ [堂園三洋]
八枚目(西) 禿頭(はげびんた) 栄養(えいよ)はずるい 眉毛(めげ)がとっ [栫 路人]
親方吟(東) 眉毛(め)げ怖(お)じっ 抱(だ)かるおたせん 可愛(むぞ)か孫 [安藤孟宗竹]
親方吟(西) 病気(やん)あがい 眉毛(めげ)を引かせた 春日和(はいびよい) [有馬凡骨]

その他の秀句 (順不同)

山が趣味 言(ちゅ)たや仲人(なかだ)ちゃ 手をば引(ひ)っ [瀬戸口抱洋]
職(しょ)き就(つ)かじ インターネッて 日(ひ)を暮(く)れっ [大和 渚]
賞どみな 縁の無(ね)主婦を 五十年 [植村聴診器]
気を遣(つ)こっ 友達(ど)しゃ台所(おすえ)さい 美味(うん)め言(ちゅ)っ [小森寿星]
左渦巻(ひだいぎき) 分(わ)からんしこん 禿(は)げっきっ [中村雲海]
PTA(ピーティーエ) 大阪弁に 役(や)くさせっ [堂園三洋]
子をば大切(て)ね すそな所(とこ)いな 子が出来(でけ)じ [諸木小春]
少子(しょうし)娑婆(しゃば) 十月腹(とつっばら)どま 風を切(き)っ [樋之口墨矢]
ワンサイズ またひっ違(ち)ごた 衣替(ころもが)え [福冨野人]
倹(つま)し女房(かか) 使(つ)こた湿布を 亭主(とと)い貼(は)っ [福山吉連]
蜘蛛(こっ)の糸(けん) 払(は)るそな所作ん 爺(じ)の踊(おど)い [米玉利乘康]
商社つあ 名刺あ全部(ずるっ) 課長(かちょ)代理 [中釜 繁]
神童が ちんちん俺(おい)が 子い戻(もど)っ [諸木小春]
こげな亭主(て)し 何(な)ゆ血迷(ちま)よたか 思(お)め出(だ)さじ [楠八重渓流]
痛(い)て棘(そげ)を そろいと掘(ほ)れち 横を向(み)っ [学]