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薩摩狂句

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薩摩郷句誌「渋柿」 第708号 7月号

雑吟     永徳天真選

一番槍 坊主頭(ぼ)じしたや なお腕白坊(きかんた)れ 見(み)ゆい孫 [楠八重渓流]
二番槍 メガネどん 掛(か)くっで見(み)ゆい 台所(すえ)ん埃(ごん) [石塚律子]
三番槍 ダーリンち 酔(よく)ろた女房(かか)が 躙(にじ)い寄(よ)っ [桜井吹雪]
四番槍 留守電(ずしでん)に 声が小(こ)めがち 爺(じ)が叫(おら)っ [前村泰山]
五番槍 妻(かか)は留守(ずし) 本の臍繰(へそく)い 息(い)くさせっ [上薗佳笑]
六番槍 実家(さ)て帰(もど)っ 避暑い来たよな 臨月腹(とつっばら) [福冨野人]
七番槍 新人の 茶入れを今朝も 褒(ほ)むい課長(かちょ) [北村虎王]

渋柿集

中村雲海 我流(わがりゅう)が 通(とお)らん会議 拗(す)ねでけっ
ペチャパイち 笑(わる)わるっどん 身軽(みが)りこっ
いざ言(つ)時(と)き いっも風邪引(かぜひ)っ 暇な奴(わろ)
安月給(やすげっきゅ) くっつくっつで 丸(ま)る暮(く)れっ
早(は)よ嫁(い)けち 言(ゆ)どん色気い 縁(えん)が無(の)し
有川南北 晩酌(だいやめ)が 今夜も美味(うん)め 強(つ)え巨人
改憲ち 右(み)ぎ寄(よ)い過ぎた 態(ふ)の総理
化粧(ぬ)っ居(ちょ)らな 真正面(まっぽ)し女房(かか)あ 見(み)やならじ
蕎麦殻(そまがら)が 毎朝(めあさ)落(ちゃ)れちょい ボロ枕
昼寝(ひんね)妻(かか) ブラジャは背中(せな)け 瘤(こっ)のごっ
弓場正己 日焼け止め 塗れば顔(つら)どま 斑(まだ)れなっ
蒸暑(ほめ)っ晩 縁側(えんが)へ爺(じじ)は 褌(へこ)で寝(ね)っ
こん暑(ぬっ)せ 巻付(めち)っ亭主(とのじょ)を 足で蹴(け)っ
夏(なっ)の浜(は)め ピチピチを見(み)け 今日(きゅ)も出張(でば)っ
胸と尻(し)や 残(の)けっ赤(あ)こ焼(え)た 夏(なっ)の浜
堂園三洋 勢(いきおい)ち 出世をすそな 名の力士
コンピューて 将棋んプロが さで負(ま)けっ
薄(う)し髪(かん)に がっつい心配(せわ)な 紫外線
稀(まれ)けんな 膨(ふく)れた財布(ふぞ)を 持(も)とごたっ
短(みし)け足 こいで女性(おなご)い きし持(も)てじ
永徳天真 面倒(めんで)くせ 言(ちゅ)わん日は無(な)か 不精者(ふゆしごろ)
叱(が)い飼主(けね)しょ またかち犬(いん)な 見(み)いもせじ
毛髪(け)は薄(う)して 爪と鼻毛は やれ伸(の)びっ
惜(あった)れち 温(ぬっ)め温(ぬっ)めで 辛(か)れ味噌汁(おっけ)
卑(いや)し兄弟(きょで) 皿んケーキを 比(くら)べ方(かた)
樋口一風 揉め事(ごっ)の 種をば提(さ)げっ 里帰(さともど)い
予報(よほ)通(どお)い やっぱい歯痒(はが)い 雨いなっ
小言(ぐぜご)つば 肴(しお)けしながあ 社長(しゃちょ)と飲(の)ん
年金が 出たなあ財布(ふぞ)も 生(い)っ上(きゃ)がっ
電池切れ じゃろで八時にゃ 爺(じ)はけ寝(ね)っ

山椒集 題「靴(くっ)」     有川南北選

レンタルん 袴(はか)めブーツで 娘(こ)は卒業(そっぎょ) [今井夢紫]
伸(ぬ)っ盛(ざか)い 靴(く)ちゃ一月(ひとつっ)で 小(こ)むけなっ [山路野菊]
良(よ)か靴(くっ)が ボロ靴(ぐ)ち化けた 風呂帰(もど)い [江口紫朗]
五客一席 横(よん)ご亭主(とと) 靴(くっ)も片減(かたべ)い ひんなけっ [おんじょどい]
五客二席 玄関(ふんごん)な 家族中(けねじゅ)ん靴(くっ)が 跳(は)ねかえっ [植村昭子]
五客三席 都会(まっ)の婿 皮靴(かわぐっ)の儘(ない) 農業(さっ)の加勢(かせ) [大西学老]
五客四席 退職(や)む い朝 ご苦労様(くろさあ)ねち 靴(く)ちもご礼(れ) [上池酔人]
五客五席 間違(まっ)ご人(て)も 無(ね)よな靴(く)つ履(ふ)ん 飲(の)み行(い)たっ [石塚律子]
選者吟 毒蛇(ハブ)恐(こわ)せ 雨靴(あまぐ)ち変えた 島ぐらし

龍虎集 「時事吟」     堂園三洋選

中国(ちゅうごっ)が すったい疲(だ)れた 北ん守(も)い [有馬純秋]
ボストンの 晴れん舞台(ぶた)ゆば 血で染(そ)めっ [鎌田小町]
政策(せいさっ)の 功罪(こうざ)ゆイカん 漁(りょ)が被(かぶ)っ [石塚律子]
四天王一席 参拝で また修復(しゅうふっ)が がん壊(く)えっ [今井夢紫]
四天王二席 一本の ボルトん緩(ゆる)み 船あ騒動(そど) [樋口一風]
四天王三席 大隅(おおすん)に 一勝(いっしょ)ん球(たま)を 持(も)っ帰(もど)っ [桑元行水]
四天王四席 バタやんも とうと帰(かえ)らん 人(ひと)いなっ [樋渡草団子]
選者吟 ここだけは 過疎じゃ無(な)かふの 屋台村

郷句相撲 題「切手(きって)」

横綱(東) 小切手を 挟(はす)だ雑誌を 屑(ぼろ)い出(で)っ [入来創雲]
横綱(西) ラブレター ニッ笑(わ)るてかあ 切手貼(は)い [折田さくら]
大関(東) 爺(じ)が舐めた 切手を孫も 舐(な)むち騒動(そど) [北村虎王]
大関(西) 少(ち)す紅(べん)が 端(は)し付(ち)た切手 宝(たか)れしっ [中間紫麓]
関脇(東) 切手をば 逆(さか)しめ貼った 絶交状(みっぎいじょ) [山元自在鉤]
関脇(西) 印刷(いんさっ)の ミスん切手が 二億(にお)き成(な)っ [湯田青秋]
小結(東) 就活(しゅうかっ)の 願書ん切手 買溜(けだ)めしっ [有馬純秋]
小結(西) 郷句(きょうく)相撲(ずも) 今度(こん)だ載(の)れよち 貼(は)い切手 [萬福平次]
筆頭(東) 切手どが 八十円で 安(やす)か旅(たっ) [西ノ園ひらり]
筆頭(西) 下手な文 派手な切手で 気を引(そび)っ [桑元行水]
二枚目(東) 綿々と 恋(こ)ゆ手紙(てが)みしっ 貼(は)い切手 [植村昭子]
二枚目(西) 切手ずい 入れたて返信(そ)の無(ね) ラブレター [津留見一徹]
三枚目(東) 慌て者(もん) 切手も貼(は)らじ ラブレター [日隈英坊]
三枚目(西) 付け文(ぶん)に 切手を貼(は)らん 返事(へし)が来(き)っ [中囿和風]
四枚目(東) 五十円(ごじゅえん)の 切手で当てた 洗濯機(せんたっき) [石塚律子]
四枚目(西) 貼(は)い忘れ ポスて投(な)ん込(く)で 思(お)め出(だ)せっ [楠八重渓流]
五枚目(東) 役(や)く終えた 記念切手が また役目(やっめ) [諸木小春]
五枚目(西) 返事(へ)ずくれち 切手も入(い)れっ ラブレター [福冨野人]
六枚目(東) まぼろしの 古(ふる)か切手が 凄(わ)ぜ高値 [おんじょどい]
六枚目(西) 懸賞(けんしょ)好(ず)っ 切手ん代金(こい)も 馬鹿(ば)けならじ [米元年輪]
七枚目(東) 念が入(い)っ ベタベタ舐(な)むい 切手貼(は)い [新地十意]
七枚目(西) 呆(ぼや)し女房(かか) 記念切手を 貼(は)っ出(だ)せっ [江口紫朗]
八枚目(東) 消印ぬ 逃(のが)れた切手 剥(へ)っ使(つ)こっ [澤津乙名]
八枚目(西) 切手ちゅを 貼(は)っちゃどこそけ 情(じょ)を繋(つ)ねっ [前田 蛍]
親方吟(東) 古(ふ)り切手 送(おく)っちょボラい 精励(はま)い亭主(とと) [満留ぐみ]
親方吟(西) 亭主(とと)ん運(うん) 切手シートも よいなこっ [伊地知 孝]

第115回南日本薩摩狂句大会 兼題「抜(に)っ」 米元年輪選

特選 臍繰(へそく)いの 置場所(ばしょ)を変えたて 素抜(すに)かれっ [市来流星]
秀一 家計簿が 合(お)わんな抜(に)たち 俺(お)ゆ睨(ねぎ)っ [中囿和風]
秀二 窓口(まどぐっ)の 勘が振(ふ)い込(こ)ん 詐欺(さ)ぎゅ見抜(みぬ)っ [上籠若菜]
秀三 息抜(いきぬ)っち 何(ない)もせん爺(じ)が 飲(の)んけ出(で)っ [堂園三洋]
秀四 抜(ぬ)っ打(う)っの 監査い社長(しゃちょ)が 狼狽(ばたぐ)ろっ [石野蟹篭]
秀五 追抜(うに)たどん 次(つっ)の信号(しんご)で 横(よ)け並(な)るっ [永徳天真]
軸吟 田の水(み)ずば 素抜(すに)っ土竜(もぐら)い 泣(な)かされっ

第115回南日本薩摩狂句大会 兼題「着物(いしょ)」 石塚律子選

特選 読経(どきょ)ん間(はざ) 保険の計算(さんにょ)すい喪服(もふっ) [上薗佳笑]
秀一 横綱(つな)ん使者 待(ま)っ紋付(もんつっ)が 畏(かしこ)まっ [諸木小春]
秀二 爺(じ)ん着物(いしょ)を 全部(ずるっ)うっ剥(へ)だ 野球拳 [澤津乙名]
秀三 女房(かか)よっか 案山子(おどし)が似合(にお)た 絹(きん)の着物(いしょ) [入来院彦六]
秀四 久振(なごぶ)いの 着物(いしょ)い連立(ての)んだ 樟脳(しょの)ん匂(かざ) [米元年輪]
秀五 紬(つむ)ぐ着(き)っ 議員がこぞっ 島おこし [新地十意]
軸吟 安(や)しも安(や)し 浴衣ん代金(こい)も ならん杉(すっ)

第115回南日本薩摩狂句大会 兼題「旗(はた)」 楠八重渓流選

特選 白旗を 懐(つく)れ女房(おかた)と 掴(つか)ん合(よ)っ [福冨野人]
秀一 旗三つ サッち上がった 美事(みご)てメン [石野蟹篭]
秀二 復興(ふっこ)した 港い夢ん 大漁旗(たいりょばた) [植村昭子]
秀三 青畳(あおだた)み 旗判定の 名勝負 [福冨野人]
秀四 読(よ)まならん 孫ん名を書(け)た のぼい旗(ばた) [加塩十白]
秀五 同(おな)し旗(は)て 別(べっ)なかツアい 付(ち)っ行(じ)た爺(じ) [中囿和風]
軸吟 農協(のうきょ)ツア ガイドん旗い ぞろぞろっ

第115回南日本薩摩狂句大会 兼題「躾(しつけ)」 樋口一風選

特選 親(お)へ向(む)こっ 習(な)るた躾を 教(ゆ)てかせっ [稲田切株]
秀一 子が外で 躾ん無さを 撒(め)っ歩(さ)れっ [下栗志乃]
秀二 小(こ)め膝を 正座(きんきん)させっ 食(たも)らせっ [伊地知 孝]
秀三 後母親(あとかか)ん 厳(きび)し躾が 宝(たか)れなっ [満留ぐみ]
秀四 躾糸 とれっ喜(よろ)くだ 婆(ば)ん踊(おど)い [棚網 鮎]
秀五 躾悪(わ)り 子供(こど)み夫婦(みと)して 詫(わ)び通(ど)えっ [入来創雲]
軸吟 親ん顔(つら) 見(み)ろごちゃいよな 娘(こ)ん躾

その他の秀句 (順不同)

次(つっ)の世で 会(お)がち涙(なんだ)で 読(よ)ん弔辞 [おんじょどい]
眠(ね)せんめち 助手席(じょしゅせ)かまこち 喋(しゃべ)っこっ [工藤天然]
点滴(てんてっ)の 雫(しず)か焼酎(そつ)どみ 見(み)えっきっ [日隈英坊]
異議無しち さくらが叫(おら)っ 郷中(ごじゅ)ん集会(よい) [江口紫朗]
立(た)っ止(ど)まっ 嗅(かず)ん帰(もど)った 土用(どよ)鰻(うなっ) [福冨野人]
自分(わ)が鼾(いびっ) じゃっとい女房(かか)は 俺(お)よ叱(く)るっ [萬福平次]
威張(いば)ってん 肩書(かたが)くとれば 只(ただ)ん人 [小野田凡太]
草野球 犬(いん)ずい球(たま)を 追(う)て走(はし)っ [黒岩正道]
横(よん)ご爺(じ)も 頭(びんた)ぶんな 丸(ま)る禿(は)げっ [下本地郷二]
管巻(じじら)亭主(て)し ご似合(にえ)ち食(くゎ)せた 期限切れ [北村虎王]
二度目かあ 彼女が誘(さそ)た ラブホテル [中村雲海]
無礼講(ぶれいこ)で 偶(まねけ)ん部下ん ガスを抜(に)っ [樋口一風]
大根足(でこんあ)す 着物(いしょ)で包めば 品(ひん)が出(で)っ [稲田切株]
週六日(むいか) 女房(かか)が躾けた 洗(あ)れやんめ [入来院彦六]

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