おんじょどいの小屋

薩摩郷句誌「渋柿」

第670号

雑吟     永徳天真選

一番槍 鍵(かっ)探(みし)け 呆(ぼや)し頭(びんた)を 叩(ど)えっみっ [西ノ園ひらり]
二番槍 素夫婦(すみ)てなっ 手抜(てぬ)っの料理(じゅい)で 黙(だま)っ食(く)っ [折田さくら]
三番槍 ドック入(い)い 検査検査で 長(な)げ一日(ひして) [吉岡道場]
四番槍 メタボ亭主(と)て 歩(ある)こち犬(いん)が 引張(そび)っ出(で)っ [山路野菊]
五番槍 病(びょ)は無(な)かて 愚痴(ぐ)つ言(ゆ)け医者い 婆(ば)は通(かよ)っ [中囿和風]
六番槍 年金の お陰三度ん 飯(め)し恵(のさ)っ [井手上政暎]
七番槍 カラオケが 趣味言(ちゅ)が誠(まこ)て 酷(ひ)で音痴 [米元年輪]

渋柿集

栫 路人 日帰(ひがえ)いが 出来(でく)い里じゃが 往(ゆ)き来(き)せじ
うんにゃとな 言(ゆ)えじ仕事(しごっ)が また増(ふ)えっ
趣味ん店 話(はな)しゃ弾(はず)んが 売(う)れはせじ
入れ知恵ん 母(かか)をば見(み)い見(み) 父(と)てねだっ
雑草(くさ)ぼうぼ 街(まっ)の真ん中(な)け 家(え)が遊(あそ)っ
有川南北 馬毛島(まげじ)めも 移設(いせっ)の雲が かかっきっ
五月病(ごがっびょ)い ならんなよかが 総理さあ
退社(ひけ)っかあ 晩に目が開(あ)っ 梟(とっこ)青年(にせ)
羊羹の 一切れ添(そ)えっ 婆(ば)が新茶
安売(やすう)いの チラし女房(かか)わろ 目を見出(みで)っ
弓場正己 燗の匂(か)ぜ サッ切(き)い上(や)げた 日曜(にちよ)大工(でっ)
首(く)びけなっ 連休(れんきゅ)ん五月(ごが)ちゃ 腹が立(た)っ
金(ぜん)が無(ね)や 兄姉(きょで)も親戚(しんじ)も 遠(と)おけなっ
仕事(しご)ちゃ無(ね)じ 戻(もど)れば鬼(おん)の 顔(つら)が待(ま)っ
免許更新(が)え 痴呆(ちほ)ん検査い 怖気(びっ)が付(ち)っ
堂園三洋 辛口(からくっ)で なかやつまらん 評論家
瞬まばたっも せじ美人(シャン)ぬば 見(み)ちょい亭主(とと)
女房(かか)ん留守(ずし) ポテトチップで 寂(さび)す飲(の)ん
嘘涙(うそなん)で 嵌(うた)っ諭吉(ゆき)つば 貸(か)せっ後悔(くけ)
草取(くさと)いが 億劫(よだ)きち無精(ふゆ)は 山羊を飼(こ)っ
永徳天真 待(ま)っ合(あ)わせ まだかまだかち ぼさっ立(た)っ
欲(よっ)ごろん 本性(ほんしょ)が出たか 遺産分け
内気者(いめごろ)が 人ち字を呑(の)ん 挨拶(えさ)ち立(た)っ
土産屋を 梯子じゃろそな 日帰(ひげ)いツア
懇親会(のんかた)で 入賞(にゅうしょ)あ駄目(ぼっ)の 敵(かた)ぐ取(と)っ

山椒集 題「怪我(けが)」     有川南北選

怪我も怪我 あんマドンナが 嫁(く)っち返事(へし) [上薗佳笑]
軽(か)り怪我も 保険目当てか 長(さし)か養生(よじょ) [澤津乙名]
見舞客(みめきゃ)きな 焼酎(しょつ)で怪我とな 言(ゆ)もならじ [吉岡道場]
五客一席 顔(つら)い怪我 またやられたか 女房(かか)天下 [新地十意]
五客二席 悪戯坊主(われこっぼ) また何(な)ゆしたか 松葉杖 [上山天洲]
五客三席 擦(す)い剥(み)たや 怪我程(ほ)だ無(ね)とに 大騒動(うそど)しっ [大久保胡坐]
五客四席 受(う)かったや 怪我じゃったろち 妬(しょの)まれっ [佐伯山神]
五客五席 怪我ち言(ゆ)が 本当(まこ)ちゃ昨夜(ゆうべ)ん 夫婦(みと)喧嘩 [中囿和風]
選者吟 怪我もせじ 丸橋(まるば)す渡(わた)い 酔(えく)れ足

龍虎集 「時事吟」     堂園三洋選

名を馳せた トヨタも世界(せか)い 叩(た)たかれっ [吉岡道場]
品格(ひんかっ)ち 言葉が追出(うで)た 朝青龍(あさしょうりゅ) [郷田悠々]
銀盤に 悔(くや)し涙(なんだ)が 落(ちゃ)えた銀 [津留見一徹]
四天王一席 基地移設(いせっ) まだも闇(やん)の夜(よ) 先(さ)ききゃ見(み)えじ [鮫島牧峰]
四天王二席 分限者(ぶげんしゃ)ん 首相(しゅしょ)じゃ解(わか)いめ 娑婆ん風 [日隈英坊]
四天王三席 腰(こし)パンに 品格(ひんかっ)なんだ 言(ゆ)たち無理(むい) [石塚律子]
四天王四席 税不足(ぶそ)き 精一杯(せっぺ)頭(びんた)を 捻(ひね)い知事 [上山天洲]
選者吟 薩(さっ)と隅(す)ん 海(うん)の国道(こくど)が また切(き)れっ

郷句相撲 題「同等(ぐゎい)」

横綱(東) 可愛(む)ぜ孫も 今でな同等(ぐゎい)の 議(ぎ)を吐(か)えっ [入来創雲]
横綱(西) 乳房(ちち)ん差で 同等(ぐゎい)をば裁(さ)べた 徒競走(ときょそう) [井手上政暎]
大関(東) 俺(おい)共(ど)みな 民主自民も 同等(ぐゎ)い見(み)えっ [佐伯山神]
大関(西) 呆(とぼ)けがち 女房(かか)を叱(く)るどん 亭主(とと)も同等(ぐゎい) [田中末木]
関脇(東) 退職金(やめぎん)の 権利あ同等(ぐゎい)ち 吠(ほ)ゆい女房(かか) [西 幸子]
関脇(西) 看病(かびょ)あせじ 同等(ぐゎい)じゃち吐(か)えた 遺産分け [楠八重渓流]
小結(東) 豚と同等(ぐゎい) おてっき食(く)ろて 肥(こ)えむくっ [樋渡草団子]
小結(西) 犬(いん)と猫 傍目(はため)にゃ同等(ぐゎい)の 横杵(よんごぎね) [樋口一風]
筆頭(東) 横綱(つ)ね同等(ぐゎい)ち 腰パンぬ叱(が)い 高齢者(としなもん) [石塚律子]
筆頭(西) 遣(や)い手議長(ぎちょ) 同等(ぐゎい)の賛否い 決(け)つ下(く)でっ [米元年輪]
二枚目(東) 呆(ぼ)え女房(かか)を 叱(が)れば貴男(おはん)と 同等(ぐゎい)ち言(ゆ)っ [山田竜生]
二枚目(西) 吝嗇(けち)言(ちゅ)えば 汝(わい)と同等(ぐゎい)よち 言(ゆ)く返(かえ)っ [前村泰山]
三枚目(東) 再婚(にどめ)同士(どし) 古(ふ)い傷(き)じゃ同等(ぐゎい)ち 慰(なぐさ)めっ [新地十意]
三枚目(西) 両方(まんぼ)共(と)め 子連れで同等(ぐゎい)ち 一緒(ひと)ちなっ [吉岡道場]
四枚目(東) 似合(にお)た夫婦(みと) 体形(からだ)も同等(ぐゎい)の メタボ腹 [澤津乙名]
四枚目(西) 肩書(かたがっ)が 何(ない)じゃれ同等(ぐゎい)の クラス会 [上山天洲]
五枚目(東) 夫婦(みと)諍(いさ)け 同等(ぐゎい)ち子供(こどん)も 相手(えて)にゃせじ [満留ぐみ]
五枚目(西) あん野党(やと)と 政治も金(かね)も 全(まっ)で同等(ぐゎい) [上薗佳笑]
六枚目(東) 浮気なら 女房(おかた)も負けん 同等(ぐゎい)の夫婦(みと)郷田悠々
六枚目(西) 切った菓子(か)す 同等(ぐゎい)かち計(はか)い 術(じゅっ)ね兄(あにょ) [原田菊男]
七枚目(東) 同等(ぐゎい)じゃった 同級生の 部下いなっ [西ノ園ひらり]
七枚目(西) 何(な)ゆすいも 二人(ふたい)で一緒 可愛(む)ぜ双子 [西迫順風]
八枚目(東) 勉強(べんきょ)せん 子の頭脳(びんた)どま 父親(ちゃん)と同等(ぐゎい) [福山吉連]
八枚目(西) 兄弟(きょで)喧嘩 婆(ば)が大(ふ)て声で 同等(ぐゎい)ち叱(が)っ [折田さくら]
親方吟(東) 括(くび)れどが 丸(まっ)で無(ね)女房(かか)は 豚と同等(ぐゎい) [諸木小春]
親方吟(西) 鬼(おん)と同等(ぐゎい) 三面記事い 地獄(じご)く見(み)っ [津留見一徹]

第76回鹿屋大会 兼題「祝(ゆえ)」 上山天洲選

鯛(て)が皿い そねくいかやい 米寿祝(べいじゅゆえ) [入来創雲]
祝(ゆえ)ん座を 義理(ぎい)で呼(よ)だ奴(と)が 弾(はず)ませっ [内村仏心]
御祝儀が 要(い)らんにゃ真(まこ)て 美味(うん)め焼酎(そつ) [諸木小春]
退院の 祝(ゆえ)ん大焼酎(うじょちゅ)で またダウン [堂園三洋]
玄孫(やしゃご)ずい 並(な)るで賑(にっぎゃ)け 百歳(ひゃっ)の祝(ゆえ) [吉岡道場]
選者吟 婆(ば)が膝い 猫ずい参加(かた)っ 白寿祝(ゆえ) [上山天洲]

第76回鹿屋大会 兼題「縦(たて)」 入来創雲選

縦ん長(な)げ 顔(つら)いカメラが 狼狽(ばたぐ)ろっ [堂園三洋]
三度目も 首(く)ぶ縦(た)て振(ふ)らじ 嫁(い)っ外(は)じっ [吉岡道場]
縦縞ん 服(ふっ)しか着(き)らん 肥満(だんべ)娘(おご) [永徳天真]
縦縞ん 服(ふっ)で短躯(じっく)や 長(な)ご見(み)せっ [中村雲海]
唇(すば)ん皺 縦じゃればこそ 可愛(む)ぞか口(くっ) [石原ミエ子]
選者吟 鶏(とい)が鳴(ね)っ 首(く)ぶ縦(た)て振った 娶(も)れ相談(そだん) [入来創雲]

薩摩郷句作品集(薩摩狂句集「くろぢょか」より抜粋)

桑畑茶坊 乳離(ちちばな)し 胡椒(こしゅ)をば乳房(ちち)い 塗(ぬ)いつけっ
戻(もど)い道(み)ち 義理(ぎい)で乗(の)せたや 事故ん遭(お)っ
世帯(しょて)暮(ぐ)らし 金(ぜん)が無(ね)なれば 夫婦(みと)喧嘩
児島豊子 揉めたたろ 地五郎(じごろ)ん木戸で 舗装(ほそ)が止(や)ん
通知表(つうしんぼ) 体操(たいそ)ん分(ぶん)な 5で通(と)えっ
借(か)い相談(そだん) 勲三等が 邪魔(ま)じけなっ
小園さち 母親(かか)い歳暮(せぼ) 臍繰(へそく)ゆ一枚(いっめ)そっ入(い)れっ
セールスが 来た時(と)か吠(ほ)えち 犬(いん)ぬ叱(が)っ
三指(みつゆ)ぶば ちた女房(かか)じゃって 掴(つか)ん合(よ)っ
児玉金蜻蛉 出張(しゅっちょ)先(ざ)く 悋気(じんき)電話が 追(う)てまわっ
二日酔(ふっかえ)で 呻吟(うどめ)っ亭主(とと)い 鍬(か)を投(な)げっ
小(ちん)け笹(さ)せ 色紙(いろが)む下(さ)げっ 孫ん見舞(みめ)
古藤雪尾 短足(たんそっ)が 最初(はっさ)か速(は)えが ずしただっ
よか衣装(いしょ)も 外股(そとま)て歩(あゆ)ん ずんだれっ
本当(まこ)っかち 団子眼(だごめ)を見出(みで)た 弥五郎(やごろ)さあ
小松鈍骨 雪(ゆっ)の中(な)け 赤(あっ)か南天 絵の如(ご)ちゃっ
早苗饗(さのぼ)いな 田んぼで蛙(びっ)も 歌(う)とでけっ
俺(お)や女房(かか)を 影法師(かげぼ)し連(つ)れっ 五十年
境 戸緒流 酌(しゃ)き回(まわ)っ 戻れば料理(じゅ)いな 煙草ん灰(へ)
亭主(てし)前は 雑巾(ざふ)く放(はな)さん 新築祝(けんぜゆえ)
振(ふ)られたや 教養(きょうよ)が低(ひ)きち 言(ゆ)っ歩(さ)れっ
境田西隆 孫ん守(も)い 爺(じ)さんも泥で 団子(だご)作(つく)い
降れば心配(せわ) 降(ふ)らんも心配(せわ)な 梅雨(ながし)時期(どっ)
胸ん内(う)つ 焼酎(しょちゅ)で語った 無口者(うんだまい)
桜山仙人 ポンカンち 木市(きいっ)で買(こ)たや 橙(でで)が生(な)っ
田舎相撲(ずも) 女房(かか)ん腰巻(めだれ)が 化粧廻(けしょまわ)し
猿(よも)踊(おど)い 尻(しい)もかかじっ 笑(わる)わせっ

その他の秀句 (順不同)

今日(きゅ)は飲(の)まん 朝い言(ゆ)たなあ 晩に後悔(くけ) [伊地知 孝]
五月晴(さつっば)れ 臍繰(へそく)や鯉幟(のぼ)い なっ泳(およ)っ [津留見一徹]
また出(で)たち 犬(いん)が赤面(せけ)ちょい 狩猟(かい)の法螺(ぎら) [楠八重渓流]
欲(よ)か言(ゆ)うめ 健(さか)しか身体(ごて)と 女房(かか)が居(お)っ [諸木小春]
夫婦(みと)喧嘩(いさけ) 根気(あや)が切れたち 後(の)ちゃ欠伸(あくっ) [上池酔人]
機械植え 畦(あ)ぜな茶飲(ちゃの)んの 孫と嫁 [北村虎王]
肩叩(たた)っ賃(ちん) 消費税もち 悪戯坊(きかんたれ) [中囿和風]
犬小屋(いんごや)ん 近(ちか)き下着あ 干(ほ)すい女房(かか) [米元年輪]
山芋(やまいも)ん 終(し)めは女房(おかた)い 出(で)っくらめ [有馬純秋]
大(ふ)て負債(おっ)け 声も萎(な)えでた 遺産分け [山田竜生]
わぜ頑張(きば)っ 今は余裕(ゆつら)す 下(くだ)い坂 [吉丸セツ子]
小(こ)め鯉幟(のぼ)ゆ ベランで揚(あ)ぐい 都会(まっ)暮らし [大西学老]
乳房(ちち)ん差で 同等(ぐゎい)をば裁(さ)べた 徒競走(ときょそう) [津留見一徹]
寝(ね)った真似 親ん本音を 全部(ずるっ)聞(き)っ [今井夢紫]
他人事(ひとごっ)ち 思(おも)た離婚ぬ 言出(ゆで)た女房(かか) [江口紫朗]
骨董(こっと)好(ず)っ 買溜(こた)めちゃ塵(ごん)ぬ 積(つ)もらせっ [満留ぐみ]
叱(が)れば叱(が)い 真似で返報(へんぽ)ん 腕白坊(きかんたろ) [山元自在鉤]
呆(ぼや)し爺(とと) 言(ゆ)う度(かし)違(ち)ごた 遺言(ゆお)くしっ [谷村まさゑ]
外孫(そとまご)が 我(わ)が家(え)ん奴(と)よか 出来(でけ)が良(ゆ)し [北原凡天]
後(うし)て来(く)い 足音(あしお)て心細(きぼ)せ 裏小路(うらこしゅっ) [下栗志乃]
婆(ば)ん小言(ぐぜ)は 聞(き)こえん真似で 手酌酒(てじゃっざけ) [鈴木芳子]
我(わ)が家(え)でな 骨董(こっと)言(ちゅ)おそな 爺(じ)が威張(いば)っ [樋渡草団子]
ニューハーフ 美事(みご)てがかった 気味悪(きぞわる)し [満留ぐみ]
盛(も)い上(あ)げっ 自腹も切った 呆(ぼ)え幹事 [丸山満月]