おんじょどいの小屋

薩摩郷句誌「渋柿」

第585号

雑吟     塚田黒柱選

一番槍 退職(やめ)っみっ 近所付合(つっ)けん 苦労(くろ)を知(し)っ [川村 明]
二番槍 偽札(にせさ)ちも 呆(ぼ)え自販機あ 釣(つ)ゆ出(だ)せっ [米元年輪]
三番槍 ひっ落選(ちゃ)れた 事務所は何時(いっ)の 間(ま)にか空(から) [郷田悠々]
四番槍 看病(かびょ)疲(だ)れが 葬式(おんぼ)んお経(きょ)い 船を漕(け)っ [上籠若菜]
五番槍 負け出せば 女房(かか)あ古傷(ふいき)ず 楯い取(と)っ [有馬凡骨]
六番槍 本当(まこっ)かよ 四月(しがっ)一日(ついた)ち プロポーズ [金井一馬]
七番槍 店員が 婆(ばあ)ちゃん言(ちゅ)たや 買(こ)わじ出(で)っ [西 三日月]

渋柿集

三條風雲児 入試パス したぎい 朝寝奴(あさねごろ)いなっ
買溜(けだ)めすち そん金(ぜん)が無(な)か 発泡酒
年金な 減(へ)ずっ出費(だしめ)は 増(いみ)らけっ
掃除機を 頭(びんた)ん端(はた)で 唸(おら)ばせっ
医者通(が)えも 仕事(しご)つ譲(ゆず)れば 気楽(きだ)きなっ
有川南北 地黒(じぐ)れ肌 笑(わ)るえば余計(じんじ) 歯が光(ひか)っ
ハンヤ節 三味線(しゃん)が踊(おど)ゆば 急(せ)っ立(た)てっ
飲(の)ん傍(そば)で ひっ諄(く)で女房(かか)い 猪口(ちょ)く投(な)げっ
胃どん切(き)っ そいかあ急(はた)っ 弱々(よと)すなっ
焼酎(しょちゅ)ん匂(か)ぜ ひといで足が 向(む)く変(か)えっ
塚田黒柱 正論ち 自分(わが)じゃ思(お)もちょい 横杵(よんごぎね)
年(と)す取れば 知(し)たん方(ほ)が多(う)け 流行語
女房(かか)は旅行(りょこ) にわか鰥夫(やもめ)は 手も荒(あ)れっ
金(ぜん)が無(ね)や 愛も半年 続(つづ)かんじ
柳腰(やなっご)しまっで似合(にお)わん 重(お)っか尻(しい)
堂園三洋 伸(ぬ)っ盛(ざか)い ギネし載(の)ろそな 酷(ひ)で大食(うぐ)れ
バカヤロち 振られた青年(にせ)が 大(ふ)と叫(お)れっ
退職(やめ)た亭主(とと) 刺激(しげっ)が欲(ほ)しち 出(で)っ歩(さ)れっ
痩(や)せ方(かた)を 企業秘密(ひみっ)ち 教(いっ)かせじ
成(な)い上(や)がい 趣味は貯金ち きし吐(か)えっ
村田子羊 ドル箱が あっで合併(がっぺ)い 尻(し)ゆ向(む)けっ
通帳(かえ)ん残高(ざん) 防犯カメれ 笑(わ)るわれっ
遠慮がち 俯(くろじ)たないの 翁草(おきなぐさ)
胃腸薬(いちょうや)く 飲(の)んじゃまた食(く)ろ いやし女房(かか)
婆(ばば)じゃって 名あ子羊(こひつじ)ん 年女(としおなご)
岩崎美知代 優(やさ)す言(ゆ)う 医者いまさかち 感(かん)くろっ
亭主(て)しゃ好(す)かん 離婚(わか)るっ言(つ)かた 五人産(う)ん
大(ふ)て地声 叫(お)れっ語(かた)れば 抓(つま)まれっ
口論(いさ)こてん いっき笑(わ)るちょい 母娘(おやこ)ん血
人並(ひとな)んに 育(お)えたて嫁(よ)めな いかん言(ちゅ)っ

山椒集 題「貝(け)」     有川南北選

サクラ貝(げ)を 愛と一緒(いっど)き 恋人(ぬ)しゃくれっ [平中小紅]
貝(け)の汁(しゅい)も 底じゃろ砂(ずな)を こさっ音 [有馬凡骨]
逆(さか)しんめ 桜島(しま)を股座(またぐ)れ 貝(け)を漁(あせ)っ [仮屋一発]
五客一席 無口(うんだま)っ まっで貝(け)のよな 反抗期 [上籠若菜]
五客二席 殻ん山 ばっかいじゃった 貝(け)のお汁(つけ) [江平光坊]
五客三席 実(み)の入(い)らん 貝(け)ずい掘(ほ)っきた 解禁日 [那加野黎子]
五客四席 病気(びょ)い効(き)っち 一(ひと)っ覚(おぼ)えん 貝(け)をば料理(じゅ)っ [西ノ園ひらり]
五客五席 マイホーム 宿借(やどが)や貝殻(けが)れ 顔(つら)を出(で)っ [岩崎美知代]
選者吟 餌(え)い与(や)れば ラッコは腹で 貝(け)を弄(もじ)っ

龍虎集 「時事吟」     堂園三洋選

行(い)っ詰(づ)まっ 総理ん鶏冠(えぼ)しゃ ずんだれっ [今釜三岳]
鹿児島(かごっま)ん 画壇に消えた 惜(お)しか星 [上籠若菜]
テレビ局(きょ)き 引(ひ)っ張(ぱ)いだこん 拉致家族(かぞっ) [福山吉連]
四天王一席 二股じゃ 如何(いか)なブッシュも 手が詰(つ)まっ [弓場正巳]
四天王二席 仲間割れ 二大政党せいとは 先(さっ)の先(さっ) [安藤孟宗竹]
四天王三席 ひょかっ行(い)た 靖国(やすくん)参(め)いで また揉(も)めっ [福山吉連]
四天王四席 拉致疑惑(ぎわっ) 米朝(べいちょ)ん間(はざ)め 薄(う)すけなっ [東 竜王]
選者吟 失言に 首相(しゅしょ)も珍(めずら)しゅ 頭(びんた)下(さ)げ

郷句相撲 題「客(きゃっ)」

横綱(東) 客寄(きゃっよ)せん 商品(しな)はただいま 売(う)い切(き)れっ [塚田黒柱]
横綱(西) 観光客(かんこきゃ)き 挨拶(えさ)ち噴(ふ)っでた 桜島 [棈松睦酔]
大関(東) 見(み)ろごちゃい 番組(ばんぐん)じゃって 客(きゃっ)が来(き)っ [野間口鈴女]
大関(西) 逆箒(さかぼ)くば 二本立(た)てたや 客(きゃ)かけ寝(ね)っ [仮屋一発]
関脇(東) 客(きゃ)く帰(も)でっ 亭主(て)しゃ布団乾(ぼ)し 精(せ)が切(き)れっ [安藤孟宗竹]
関脇(西) 客(きゃ)くば見て 女房(かか)は茶の葉を 違(ち)ごわせっ [弓場正巳]
小結(東) 酔(よ)くれ客(きゃっ) 送(おく)ろち言(ゆ)わにゃ 尻(し)や上(あ)げじ [山田竜生]
小結(西) 客(きゃ)く帰(も)でっ そいから母(かか)は 子ん躾 [中間紫麓]
筆頭(東) 少(すっ)ね客(きゃっ) 赤字を乗せた 田舎バス [堂園三洋]
筆頭(西) 歯痒(はが)い奴(わろ) 触(かか)い散(ち)らけっ 買(こ)わん客(きゃっ) [津曲とっこ]
二枚目(東) スタンドん 一円値引(ねび)き 客(きゃっ)が寄(よ)っ [鈴木一泉]
二枚目(西) 土産どま 買(こ)わじ便所(まなか)い 客(きゃ)か並(なる)っ [福冨野人]
三枚目(東) 観光客(かんこきゃ)き 少(ち)す物足(ものた)らん 噴(ふ)かん桜島(しま) [坂元鶴山]
三枚目(西) 人徳(じんとっ)か 見舞客(みめきゃ)か絶(た)えん 爺(じ)の病気(やんめ) [有村土栗]
四枚目(東) 客(きゃっ)顔(づら)で 座(すわ)っ動(いご)かん 横道(おど)な嫁 [松元清流]
四枚目(西) 迷(まぐ)れ客(きゃ)き 寄せ集めした 刺身(さし)む盛(も)っ [津留見酎児]
五枚目(東) 兎(うさっ)小屋(ご)へ夜通(よし)て鼾(いびっ)の 泊(とま)い客(きゃっ) [入来創雲]
五枚目(西) 大事(でし)な客(きゃ)き 子供(こどん)じゃ済(す)まん 議(ぎ)を言出(ゆで)っ [有馬凡骨]
六枚目(東) 長尻(ながじい)の 飲(の)ん客(ぎゃ)か女房(おか)て 世辞(め)すば言(ゆ)っ [畑山真竹]
六枚目(西) 客(きゃっ)の前 長男(すよ)ん悪戯(てんご)を 目で叱(く)るっ [金井一馬]
七枚目(東) 客(きゃっ)の声(こ)へ 新(あた)らしピアノ 弾(ひ)っでけっ [福山吉連]
七枚目(西) 目の肥えた お客(きゃ)き店員(ういこ)が 擾(こな)されっ [上籠若菜]
八枚目(東) おじゃんせち 出水(いずん)の鶴(つい)が 客(きゃ)く集(よ)せっ [稲留明天]
八枚目(西) ぼそぼそっ 言(ゆ)ちゃ頭(びんた)下げ 弔問(くや)ん客(きゃっ) [田代彦熊]
親方吟(東) わぜ繁盛(はんじょ) 客(きゃっ)が客(きゃ)く呼(よ)ん 手打(てう)っそば [村田子羊]
親方吟(西) 遣(や)い手女将(ママ) 客(きゃ)き政論も 四(よ)つい組(く)ん [岩崎美知代]

その他の秀句 (順不同)

女房(かか)ん方(ほ)が 良(よ)か値(ね)がすそな 牛(べぶ)ん市(いっ) [津留見酎児]
早(は)よ産(う)めち 孫(ま)げ催促(せず)かれた 脂腹(あぶらばら) [上籠若菜]
化粧(けしょ)落(お)とし ついで色気も ひっ消(け)せっ [永徳天真]
初(はっ)デート 汗を拭(ぬ)ぐ拭ぐ 手を握(にぎ)っ [永徳天真]
無礼講(ぶれいこ)ん 議(ぎ)をば覚(おぼ)えっ おった課長(かちょ) [平中小紅]
クリスチャン じゃって仏滅(ぶつめ)ちゃ 挙式(し)く避(さ)けっ [樋口一風]
縁遠(えんど)え娘(こ) 賞味期限が 気(き)いかかっ [樋口一風]
病人(びょにん)じゃち 我慢(きば)っ横(よん)ごん 舵(か)ずば取(と)っ [西ノ園ひらり]
実力ち 内心(ねしゅ)じゃ思(おも)どん 偶然(まぐれ)言(ちゅ)っ [津曲とっこ]
貧乏(びんぶ)世帯(じょて) 財布(ふぞ)並(な)み痩(や)せん 肥満(だんべ)女房(かか) [蔵ノ下夢石]
産地詐欺 わいもかち貝(け)は 舌(べろ)を出(で)っ [田中末木]
貝(け)買(け)け来(け)ち 担売(いねう)い婆(ばば)ん 健(さか)し声 [菖蒲谷天道]
習字塾(じゅっ) 八(はっ)の字(じ)髭で 帰(もど)っ来(き)っ [堂園三洋]
日本語も まともい出来(でけ)じ 英語塾(じゅっ) [江平光坊]
向(む)こも義理(ぎい) こっちも義理の 久(な)げ交際(つっけ) [東瀬戸緋呂子]